作業を中断させない「長篠メソッド」【理論編】シゴトハック研究所

複数の仕事を同時進行させるだけではなく、1つの仕事も細切れの時間で作業しなくてはならないのが、現代のビジネスマンだ。戦国時代の「長篠メソッド」に解決策を見る。

» 2006年10月05日 16時32分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題:作業を中断させられてもすぐに元の作業に戻れるようにする

状況説明前回は、「タスクの性質に合わせて最適な時間帯に固める」ということで、取り組もうとしているタスクに対して自分がそのタスクにふさわしいモードになれる時間帯を選ぶといい、というアイデアをご紹介しました。

 とは言え、せっかく集中したい午前中に会議が入ったり外出の予定が続いたりと、なかなか自分の思うように時間を取れないこともあります。また、作業途中で急に呼び出されたり、込み入った電話の対応に追われたりすると、元の作業に復帰するのに余計な時間がかかってしまうこともあるでしょう。

 このような、自分の意志とは無関係に時間を分断された場合でも、うまく対応できるようにするにはどうすればいいでしょうか。


コツ:常に頭の中をカラにしておく

 課題となるのは、中断に強い対応体勢作りといえるでしょう。ある程度の中断は仕事にはつきものですから、中断とうまく折り合いをつけるという方向性で考えてみます。

帰りのカフェミーティングで固めてしまう

 まず、中断のない時間帯を活用することが考えられます。例えば、朝早めに出社することで、電話やメールや上司に介入されることなく、自分の仕事を進めることができます。

 何人かで客先の打ち合わせに参加した場合は、まっすぐに会社に戻るのではなく、めいめいの頭の中がホットなうちにカフェに入って、打ち合わせの内容をまとめるためのショートミーティングを行うのもいいでしょう。その場で次回の提案内容をすり合わせて紙に手書きでもいいのでラフ案まで作ってしまえば、後の作業が楽になります。これは、必要なメンバーがそろっている状況を活用していることになります。

 そのまま会社に戻ってしまうと、参加したメンバーはそれぞれの仕事に散ってしまうため、情報交換がしづらくなりますし、時間が空くことで記憶もあいまいになって、思い出すための時間が余計にかかってしまいます。

 もちろん、帰りの道すがら口頭で確認し合うことで済む場合はそれでもいいのですが、最低限何をするのかを手帳に走り書きするなどして、頭の中をカラにしておきます。

状況把握はタスクリストに任せる

 次に考えられるのが、中断が入っても後からすぐに再開できるようにしておく方法です。再開がもたついてしまう原因の1つに、「いま自分が何をやっているのかを頭でしか把握できていない」ことがあります。

 むしろ、頭の中はカラにして、状況把握はすべてタスクリストに任せてしまうほうがよいでしょう。仕事をしながら、1つタスクが終わるごとにタスクリストの対応するタスクにチェックマークを入れて消し込んでいくことで、常に自分の「現在地」を客観的に把握できます。

 頭だけで状況を把握することは、外出する際に水の入ったグラスをお盆に載せて持ち運ぶようなもので、水のことが気になってほかのことに注意を向けられなくなってしまいます。タスクリストという“水筒”に入れることで、安全に持ち運ぶことができますし、何よりも必要な時以外は忘れることができます。

「長篠メソッド」でタスクを配分する

 まず「長篠メソッド」という名前は、戦国時代の長篠の合戦から取っているのですが、これはこの合戦における以下のような特徴になぞらえたものです。

  • 鉄砲隊をいくつかのチームに分ける。
  • 1つのチームが撃っている間にその後ろで別のチームが弾込めをする。
  • こうすることで弾込めのタイムロス(=攻撃のチャンスロス)を最小化する。

 仕事においても、

  1. 弾を撃つ時(=仕事に取り組んでいる時)
  2. 弾を込める時(=仕事の段取りを考えている時)
  3. 鉄砲から離れている時(=仕事から離れている時)

 という異なるモードがありますが、弾を撃つ時に最大の力を発揮するには弾を込める、すなわち準備や段取りが欠かせません。逆に休憩をしている時にはいったん仕事のことを忘れることも意外と大切です。

 弾を込める時、すなわち仕事の段取りを考えている時というのはタスクリストを眺めながら、取りかかる順番に並べ替える作業が該当します。ここで順番を決めておけば、後は各タスクに没頭することができます。

 また、何かアイデアを考えるタスクは仕事モードにいる時よりも仕事から離れている時のほうが向いています。アイデアは「さぁ、考えるぞ」と思ってもなかなかひらめかないものですが、電車に乗って車窓を流れる風景をぼんやりと眺めているような時(=仕事から離れている時)に突然降ってきたりします。

 このタイミングを逃さず、そのアイデアの内容をメモするなどして保存するようにします。そしてオフィスに戻った時、すなわち仕事モードに復帰したらすぐに保存したアイデアを呼び出して行動に移すようにします。

 このようにモードに合わせてタスクを配分することで、今まで有効に使えていなかった時間を活用できるようになります。

 以上、3つのアイデアをご紹介しましたが、共通点として仕事の区切りがつくたびに頭の中をカラする、という考え方です。中断に強い対応体勢とは、頭の中に余地がたっぷりある状態といえるでしょう。

筆者:大橋悦夫

仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)がある。


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