“1人プロジェクトマネジメント”に取り組んでみようデジタルワークスタイルの視点

チームで働く場合の仕事管理術である「プロジェクトマネジメント」。実は、プロジェクトのリーダーではなくとも“マネジメント”できるのです。自分自身の仕事管理をチーム全体に広げてみませんか。

» 2007年02月07日 07時29分 公開
[徳力基彦,ITmedia]

 ここしばらくToDoリストを使った個人の締切管理や仕事管理の話を紹介してきました。

 ですが当然のことながら、会社の仕事のうち1人で完結するものはほとんどないはず。組織で仕事をしている限り、社内であれば同じ部署や他部署のメンバーと連携することも多いでしょうし、独立している人であっても社外パートナーや顧客と一緒に仕事をすることが増えています。

 そんな中、自分1人だけ「ライフハックの鬼」を気取って、担当分の仕事だけをきっちり片付けたところで、ほかの人の遅れやミスがあったら結局全体のプロジェクトは成功しません。いくらライフハックに励んだところで意味がないのです。失敗してしまった同僚のせいにするのは簡単ですが、組織のプロジェクトや作業を完遂する――という最終的な目的を忘れてはいけません。

 そこで今回からは、個人の仕事管理の話を離れ、チームで働く場合の仕事管理術である「プロジェクトマネジメント」に視点を当ててみたいと思います。

1人プロジェクトマネジメントに取り組んでみよう

  • 難しい理論は忘れる
  • 取り巻く人たちの作業をリスト化
  • 作業時間を見積もる

まずは難しいプロジェクトマネジメントの理論は忘れよう

 日本ではなぜか「プロジェクトマネジメント」をしようというと、ほとんどの人が「そんな難しいのは自分には無理だよ」という反応を示します。プロジェクトマネジメントという言葉が持つ雰囲気のせいか、一般的に出回っているプロジェクトマネジメントの理論のせいか、多くの人がプロジェクトマネジメントというのは何か専門の知識を勉強して初めて実践できる特殊技能か資格のように考えているようです。

 それは大きな間違いです。

 一度、そのプロジェクトマネジメントのイメージを綺麗さっぱり忘れてください。もちろん、大規模なシステム導入のプロジェクトでは、そういった専門知識も必要でしょうが、今回取り上げるのはそういう話ではありません。もっと身近な話なのです。

 一般的なプロジェクトマネジメントの世界で、プロジェクトというと「始めと終わりが決まっている独特な活動」と定義されています。こう書くとなんだか小難しそうな印象を受けるかもしれませんが、肝心なのは「期間」と「目的」が決まっている活動のこと。「4月までにWebサイトを構築する」のもプロジェクトなら、「来週金曜日の同窓会の準備を進める」というのもある意味プロジェクトなのです。

 では、マネジメントとは何でしょうか。簡単に言ってしまえば、期間と目的が決まっているプロジェクトを締め切りまでに終わらせる――ことです。

 以前、記事「ToDoリスト3つのワザ」で大きいToDoは作業をリスト化して複数の締め切りを設定する方法を紹介しましたが、これなどもまさにプロジェクト。実は誰でも、多かれ少なかれプロジェクトマネジメントを実践しているわけです。

自分のチームの仕事の作業リストを作ってみよう

 プロジェクトマネジメントが専門技能じゃないということがわかって少し安心したら、今自分が担当している仕事で、「1人プロジェクトマネジメント」をやってみましょう。

 あなたがその仕事でリーダーかどうかというのは、この際、問題ではありません。その仕事で必要となるだろう作業をGTDの要領で書き出してみてください。その仕事に関連する作業を「すべて」書き出すということです。

 例えば、ある顧客にプレゼンテーションをしようと思っていて、資料を3人で共同で作成するとします。「資料の作成」はもちろんですが、それ以外にもさまざまな作業があるはずです。「顧客とのアポイントの調整」もする必要があるでしょうし、事前にプレゼンの練習をするための「会議室を予約する」必要もあるでしょう。「資料をホッチキス止めする」作業や、当日「タクシーを呼ぶ」必要もあるかもしれません。

 1人で書き出すのが難しければ、チームメンバー全員でやってみてもいいでしょう。大事なのは、「自分の仕事」という視点ではなく、その「プロジェクトの仕事」、つまりプレゼンテーションを成功させるために必要な仕事をすべて書き出してしまうということです。

 「自分の仕事」を基準に考えてしまうと、必ずそれぞれのメンバーが自分の仕事の範囲を狭く考えてしまいがち。すると、お互いの“守備範囲”の間に大事な仕事がポトリと抜け落ちてしまいます。これこそが、プロジェクトの失敗の原因になる要因の1つになるわけです。

 仕事が抜け落ちていることに気が付いたころには、その仕事は手遅れになっていることがほとんど。極端な話、この作業リストがちゃんとできているなら、そのプロジェクトは半分成功したも同然といえるでしょう。

プロジェクトの作業時間を見積もってみよう

 プロジェクトの作業リストができたら、次にそれぞれの作業の見積もりをしてみてください。といっても、いきなりそんな見積をしても正確な見積なんかできるわけはありませんから、以前「自分時間予約術」でご紹介したようなざっくりとした見積もりで構いません。プロジェクト全体の規模によって、30分単位から1日単位まで、時間の単位も適度に変えるのがいいでしょう。

 とにかく、1度全作業を見積もりするのが最初の一歩。見積もりをした次に、その時間を担当者ごとに合計してみましょう。これも自分時間予約術と同様にざっくりとでOKです。プロジェクトの締切までの業務時間と、見積時間を比較すれば、そもそも現在のプロジェクトの作業が、締切に対してどれぐらい余裕があるかを確認できるはずです。

 この段階で、すでに見積時間があっさり業務時間を上回っているようだと、そのプロジェクトは「破綻まで秒読み」かもしれません。“危険水域”の警告だと思って、今のうちにやり方を変えるか、締切をずらしてもらうか、それとも人を増やすなり、土日出勤するなり、真剣に考え直した方がいいでしょう。

 また、「各スタッフが何時間分の仕事を抱えているか」を把握しておけば、その仕事が遅れたとしても、どこまでほかの人がフォローして挽回可能なのかもある程度分かります。明らかに抱えている作業の見積時間が、残りの業務時間を上回りそうなメンバーがいれば、早めにフォローできるはずです。

 こうして、作業リストと作業の見積時間のシートを1つ作っておけば、後はプロジェクトの間に定期的に振り返るだけで、1人プロジェクトマネジメントの基本は達成です。

 もちろん「そんな簡単なやり方では、現在抱えている複雑なプロジェクトの管理はできないよ」という人もいるかもしれません。ですが、まずはここから始めてみてください。この簡単なやり方ができないようでは、複雑なプロジェクトマネジメントなんて、そもそもできるわけがないのですから。

 何人メンバーがいようと、どれだけ大規模なプロジェクトになろうとも、結局、締切管理のための基本は、これまで紹介した個人の締切管理術とそれほど変わりません。もしあなたが、GTDやさまざまなライフハックを駆使し、仕事をストレスフリーで管理できるようになってきたと感じているのであれば、ぜひその対象を自分以外に対しても広げてみてください。

筆者プロフィール 徳力基彦(とくりき・もとひこ)

NTT、ITコンサルを経て、現在はアリエル・ネットワーク株式会社プロダクト・マネジメント室マネージャ。ビジネスパーソンの生産性向上のためのソフトウェアの企画・開発やコンサルティング業務に従事するほか、グループウェアやブログ、仕事術などに関する執筆・講演活動を行っている。ブログは「ワークスタイル・メモ」と「tokuriki.com


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