“未来週報”で重要な仕事を中断させない――「作業予告術」デジタルワークスタイルの視点

「頼まれ仕事ばかりでは自分の仕事が進みません」。自分がより重要な仕事をこなすためにも、上司が優先度を適切に決められるようにするためにも「作業予告術」を実践してみましょう。

» 2007年01月24日 11時43分 公開
[徳力基彦,ITmedia]

 前回、急な割り込み仕事を断るための「自分時間予約術」をご紹介しました(1月17日の記事参照)。割り込む仕事が単発でたまにならこの方法で大丈夫かもしれませんが、次から次へと仕事を頼まれてしまって「キリがない」と感じている人もいるかもしれません。

 仕事ができると思われている人は、その分いろんな人が頼ってくるものですし、こちらの状態を考えずに自分の仕事を最優先で割り込ませてくる人はどんな職場にもいるはず。そこで今回は、割り込み仕事を断るのではなく、無理な割り込み仕事を頼まれにくい環境にするためのテクニックをご紹介したいと思います。

仕事を抱え込みすぎないための作業予告術

  • 現在抱えている仕事のリストを公開してしまう
  • その週にやる予定の作業を上司に宣言してしまう
  • ただし、「忙しい忙しい」とは言い過ぎない!

現在抱えている仕事のリストを公開してしまう

 まず最初に試してもらいたいのは、現在自分が抱えている仕事のリストを公開してしまうことです。

 前回の自分時間予約術で作成した自分が抱えている作業のリストを、社内のグループウェアやグループのミーティングの際に公開してみてください。割り込み仕事でよくあるトラブルの典型的なパターンは、頼まれる側には余裕がないにも関わらず、頼む側は「これぐらいすぐやってもらえるだろう」と気軽に思っていること。気軽な仕事でもたくさん積み上がると結構な作業量になるものです。

 頼まれる側と頼む側の“ギャップ”を解消するには、まずは自分がどれぐらいの作業を抱えていて、どれぐらいの時間でやるつもりなのか公開してしまいましょう。これで、割り込み仕事を頼む相手側にも、こちらの状況が伝わりやすくなるはずです。

 え? そんな「自分の仕事を公開する」なんてできないって?

 ホワイトカラー的な仕事の人はそう思う人もいるかもしれませんが、ちょっと冷静に考えてみましょう。会社から給料をもらっているのであれば、その対価としてどれぐらい働くかということを考慮しています。工場のラインで働く人から、システムエンジニアやコンサルタントなど、成果物が分かりやすい企業や職種によっては成果と対価を公開しているところもあるでしょう。

 とはいえ、社内調整や外部との交渉が多いホワイトカラー的な仕事は成果物がはっきりしないことが少なくありません。時間的にもあいまいになりがちです。実はこのため、仕事の優先度が分かりにくくなり、割り込み仕事が増える原因にもなっています。

 そこで冒頭にかいたように、有形無形の成果を生み出すであろう全作業を公開してしまうのです。最初はちょっと恥ずかしいかもしれませんが、一度公開してしまえば気も楽になりますし、公開することでほかの人にも無駄な作業がないか確認してもらえるかもしれません。

その週に実施する作業を上司に宣言してしまう

 短期にやるべき仕事が頻繁に変わる人の場合には、毎回公開している作業リストを修正するのも面倒かもしれません。そんな方にお勧めなのは、週末や週の頭に週報を出してしまうことです。もちろん、週報と言ってもいわゆる実績を報告する週報ではなく、これから実施する予定の作業ノルマを宣言する“未来の週報”です。

メール文例

 ○○殿

 お疲れ様です。
 法人営業本部の○○です。

 来週1週間は、下記の作業を行う予定です。ほかに必要な作業や、先にやっておいた方がよい仕事があればご指示ください。

  • ○○企業向けプレゼン資料作成  4時間
  • 社内説明資料作成        4時間
  • 新製品企画検討         4時間
  • 顧客訪問および移動      12時間
  • 社内打ち合わせ         2時間

 もちろん、作業見込時間を無理に書く必要はありません。大事なのはこうやって割り込み仕事を依頼してきそうな相手に自分の作業を事前に宣言しておくことです。直属の上司以外にも、よく仕事を頼まれる先輩やグループメンバーにもメールをCCしておくといいと思います。

 これにより、相手にも毎週自分の状況を理解してもらうことができますし、割り込み仕事を依頼されたときにも、どの作業を犠牲にするのか、もしくはほかの人に担当してもらうのかという相談もしやすくなります。

ただし、忙しい忙しいとは言い過ぎない!

 注意して欲しいのは、この作業はあなたが仕事を「やらないために」しているのではないという点です。

 よく「忙しい」と言うのが口癖になっている人がいますが、これはやりすぎると逆効果になります。頼まれる仕事を今忙しいからと内容も聞かずに片っ端から断っていたら、最終的には誰もあなたに頼らなくなるでしょうし、作業の要領が悪い人間とみなされ会社や部署にとって不要な人間になってしまうかもしれません。

 作業リストの公開や実施する作業の宣言は、あくまであなたが会社や組織のために、より重要な仕事を「やるために」行う作業です。

 もし現時点で大量の作業を抱えていたとしても、会社の状況によってはその仕事よりも優先度の高い仕事を緊急に処理しなければいけない時もあるでしょう。状況の変化とともに不要になる作業もあるかもしれません。

 優先度の判断を自分自身で100%完璧にできるのであれば心配はありませんが、通常、優先度を決めるのは上司であり、先輩であり、組織です。その判断を支援するぐらいのつもりで、作業リストを公開するようにしてください。

 同僚の信頼を得て、次々に仕事を依頼されるのは決して悪いことではありません。ただ、あまり頼られすぎて本当にやらなければいけない仕事がおろそかにならないように、上手く作業リストを活用してもらえればと思います。

筆者プロフィール 徳力基彦(とくりき・もとひこ)

NTT、ITコンサルを経て、現在はアリエル・ネットワーク株式会社プロダクト・マネジメント室マネージャ。ビジネスパーソンの生産性向上のためのソフトウェアの企画・開発やコンサルティング業務に従事するほか、グループウェアやブログ、仕事術などに関する執筆・講演活動を行っている。ブログは「ワークスタイル・メモ」と「tokuriki.com


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