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» 2007年05月14日 20時24分 UPDATE

日本全国ラボめぐり:実世界とコンピュータ世界の融合――ソニーコンピュータサイエンス研究所 (1/3)

ソニーコンピュータサイエンス研究所(CSL)の研究員、暦本純一さんの研究テーマは「実世界とコンピュータ世界の融合」だ。無線LANを使って現在位置を特定する「PlaceEngine」や現実のカードとCGを融合するゲームなどの成果を上げている。

[秋元裕樹,ITmedia]

 日本全国ラボめぐりの第3回は、ソニーコンピュータサイエンス研究所(CSL)です。サイボウズ・ラボの秋元裕樹さんが、インタラクションラボラトリーに所属する暦本純一(れきもと・じゅんいち)さんと末吉隆彦(すえよし・たかひこ)さんにお話を聞きました。(編集部)

yy_csl06.jpg ソニーコンピュータサイエンス研究所の暦本純一さん(左)と末吉隆彦さん

ソニーのソフトウェア関連の技術力を高めるために設立

秋元 CSLとはどういう組織なのでしょうか。

暦本 CSLは、「アイボ」を手がけた土井利忠氏が1988年に立ち上げました。当時のソニーは「NEWS」というワークステーションを持っていましたが、ソフトウェアに特に強いというわけではありませんでした。ソフトウェアを自ら作れる技術力をソニーの中に持つべきだということで設立されたのがCSLです。開設当初はOSなどの基盤研究が中心でした。

 現在オフィスは東京とパリにあります。パリではアパートの1階と地下を借りていて、かっこいいところですよ。

秋元 ソニー本社とは別会社なんですね。ソニー本社との交流はあるのでしょうか?

暦本 設立当時はそれほど多くはなかったですが、社員の行き来も、プロジェクトを通した交流や共同開発も、だんだん密接になっていると言えます。

CSL研究員はプロ野球選手のような年次契約

秋元 ソニー本体と社員の待遇などは違うんでしょうか。

暦本 CSLの研究員は毎年更新の年次契約なので、プロ野球選手のようなものです。研究成果を出すことが必須で、一般の会社員とは違うところが多いですね。

 いつまでに何をやるかを通知すれば、このオフィスにいる必要はありません。年2回の社内での発表と年1回の社外の発表で研究成果を出し、それを基に翌年の契約に臨むことの繰り返しになります。

秋元 Webサイトには実績として論文発表がかなり出ていますが、学会発表や論文は奨励されているんでしょうか?

暦本 特にそれをしなければならないということはないです。ただ、会社に対して自分の成果を見せる形として学会などは分かりやすいでしょうね。

秋元 CSLではどんな研究がなされているのでしょうか?

暦本 パリでは脳科学や音楽の研究、言語の研究などが行われています。東京では、ファンダメンタルラボとインタラクションラボの2つに分かれます。

 ファンダメンタルラボでは、基礎的な研究や、広い意味でコンピュータに関係する研究などを行っています。脳科学の研究で有名な茂木健一郎さんはファンダメンタルラボにいます。

 我々の所属するインタラクションラボでは、いわゆるコンピュータサイエンス的な研究を行っています。その中でも、私の興味は実世界とコンピュータ世界の融合にあります。

秋元 研究テーマはどうやって決めるのですか?

暦本 CSLには、プロジェクトを立案して遂行していける人だけが集まっています。どんなテーマでも、研究員個人のアイデアから非公式に始まります。

 テーマ選択の自由度はとても高いです。茂木健一郎さんのテーマである脳科学のように、狭い意味のコンピュータに捉われているわけでもありません。

秋元 研究員は全部で何人ぐらいいるのでしょう。外国人研究員や女性研究員はいますか?

末吉 東京とパリ、両方合わせて20数名です。外国人には、フランス人、ドイツ人、ロシア人などがいます。女性は1割強ですね。このほか、大学院の学生などのインターンがいます。

実世界とコンピュータ世界の融合を研究

秋元 暦本さんと末吉さんの最近の研究内容について教えてください。

暦本 インタラクションラボの研究成果を実用化したプレイステーション3用のゲーム「THE EYE OF JUDGMENT」が、今年の秋に発売される予定です(4月26日の記事参照)。

 このゲームでは、研究成果をもとに、手に取って触れるカードと、触れられない画面の中のCGを統一的に扱っています。ビデオカメラでカードを認識して、そこにコンピュータグラフィックス(CG)を合成する仕組みです。

yy_csl01.jpgyy_csl02.jpg 「THE EYE OF JUDGMENT」では、実際のカードの上にCGのモンスターが現れる

秋元 なるほど。カードの上にそのカードのあらわすモンスターが合成されて表示されるんですね。インタラクティブなインタフェースの研究が、ちゃんと実用化されているんですね。

暦本 もともと、ワークステーションで動くものはかなり前からやっていたんですが、プレイステーション3のようなゲーム機が発達してきたので、一般向けのゲームに適用することができるようになってきました。

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