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» 2007年05月18日 14時43分 UPDATE

シゴトハック研究所:シゴトハックを思いつくためのコツは?【解決編】

仕事のうまいやり方を考え出すためには、観察を通じて“原則”をあぶり出すことが重要です。具体的にうまくいったやり方を抽象化してコツをつかんでいきましょう。

[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題

 「連休明けシンドローム」を克服するには?

 コツ:「原則」をあぶり出す


 同じ1つの仕事であってもその進め方は無数にあります。状況に応じて最適なやり方を選ぶのはもちろん、人のよってもさまざまな基準がありますから、「これが最適なやり方だ」という1つのやり方に絞り込むことにはあまり意味がありません。

 ここで考えるべきことは、自分自身にとって、どのようなやり方が一番しっくり来るのか、です。たとえほかの人から「それは効率が悪い」と言われたとしても、そのやり方で自分なりに「うまくいく」という実感が得られていたり、自他ともに満足のいく成果が出せていたりすれば、問題はないわけです。

 このような「自分なりにしっくりと来るやり方」を考え出すためには、その過程でさまざまなやり方を試しながらも、最後は自分ならではの工夫を盛り込む必要があります。

 その際にヒントとなるのが、これまで経験してきた自分の仕事のやり方に加えて、身の回りにあるさまざまな事物にひそむ原則に注目することです。

経験における原則に注目する

 うまくいったやり方には必ず「うまくいく」ための原則が隠れているものです。知らず知らずのうちにその原則に従ったからこそ、「うまくいく」という結果が得られたと考えられるからです。

 自分にとって未経験の新しい種類の仕事にもかかわらず、さほど苦労したり手間取ったりすることなくできてしまうことがあるのは、その仕事の原則に沿ったやり方で取り組んだからだといえます。

 例えば、コンビニで買い物をする時とスーパーで買い物をする時とでは、買うものや目的が異なっているとはいえ、同じように「お金を払って物を買う」という行為は共通しています。スーパーで買い物ができるのに、コンビニに行くと手間取ってしまうという人はあまりいないでしょう。

 これは、人が何らかの手続きを覚え込む際に「スーパーでの買い物の手順」という具体的なレベルではなく、「お金を払って物を買う手順」という、より抽象化された原則を記憶しているからだといえます。それゆえ、初めて訪れた店でも問題なく買い物ができるわけです。

 まずは、自分でやってみてうまくいった方法があれば、すぐに目につく部分ではなく、その方法がよって立っている土台の部分に目を向けてみましょう。

 その方法における、ほかの方法が備えていないような特徴的な要素は何か?

 という問題意識を持って観察をします。さらに、

 その方法でやってみることは、要するに何をしていることになるのか?

 という問いかけをします。このように、その方法が持つ際だった特徴要領を把握することによって、枝葉末節まで熟知していなくても、その方法を採り入れることができるようになります。言い換えれば、その方法の原則を知ることができるわけです。

 例えば、英語をマスターした人が、次にドイツ語を習得し、さらに韓国語の勉強を始めたとすれば、おそらく韓国語がものになるまでの時間や手間はドイツ語ほどではないでしょう。最初の外国語である英語と比べればさらに少ないエネルギーで済むはずです。

 これは、さほど意識をしなくても多くの言語を学ぶ過程で、知らず知らずのうちに外国語を学ぶ上での原則が身につくためだと考えられます。その結果、ほかの言語が備えていない、その言語の特徴的な要素だけを拾っていくことで、「要するに何を覚えればよいか」が分かるようになり、少ない手間と時間で要領よくその言語を習得できるわけです。

 「セブンイレブンでの買い物の仕方」や「ファミリーマートでの買い物の仕方」を個別に覚えるよりも、「コンビニでの買い物の仕方」、さらには「店での買い物の仕方」といった具合に、抽象度を上げていくことによって、得られる「要領」はシンプルになっていきます。これは、言語と同じように、「さまざまな店での買い物」を経験したからこそ得られたものだといえます。

観察を通して原則をあぶり出す

 とはいえ、一人の人間が経験できることには限りがありますので、実際に自分でやってみなくても、身の回りにある、うまく回っている(ように見える)仕組みを観察することからも同様の学びを得ることが必要です。

 例えば、図書館に行くと「十進分類法」によって膨大な量の本が整然と配架されていることに気づきます。この分類方法の特徴は、

  • 分類には0〜9の数字のみを使う
  • 10種類を1つの単位とする

 という2点です。例えば、何かを100種類に分けたい時は、まず0〜9までの10のグループに分け、それぞれのグループごとにさらに0〜9の10種類に分けていきます。

 どうしても10に収まらない場合は、0〜8までに主要なものを納め、9を「その他」として、その下にさらに10のグループを作って収めるようにします。

 こうして、分類対象が増えても、常に一定の方法で分類し続けることができるわけです。

 この方法を実践する上で最低限覚えておくべきことは、「分類項目は10より大きくしない」というシンプルなルールです。これさえ守っていれば目的は果たされるからです。

 では、この方法から学べることは何でしょうか。それは、

  • 分類には0〜nの数字を使う
  • n+1種類を1つの単位とする
  • 分類項目はn+1より大きくしない

 という抽象化された原則です。「10」という上限値は、その方法を応用しようとしている分野によって変更してもいいでしょう。例えば、次のような分類をしようとするとき、この方法が活用できるはずです。

  • RSSリーダーに登録したブログの分類
  • 小遣い帳の科目の分類
  • フォルダの分類

 それぞれについて、実際に使う上で最もしっくり来る上限値を決めておくことで、少なくとも分類することに頭を悩ませる機会は確実に減るはずです。

 「お金を払って物を買う手順」や「十進分類法」のように、目的に応じていろいろな応用が可能なやり方のことを【スキーマ】と言います。粗っぽく言い換えれば、「テンプレート(ひな形)」です。

 例えば、「請求書のテンプレート」には、社名や住所、あるいは枠線などが既に印刷されており、案件名や金額など、その都度異なる部分だけが空欄になっています。テンプレートを利用することで、請求書を発行するという作業は、空欄を埋めていくだけで済みます。

 同様に、「お金を払って物を買う手順」というスキーマにおいても、金額や商品というその都度変化する部分は“空欄”になっており、場面に応じて、金額や商品を当てはめているわけです。「十進分類法」の場合は、上限値が“空欄”に当たります。

 このように、身の回りにある仕組みを観察し、その裏に隠れているスキーマを見つけ出すことで、別の目的に応用することができるわけです。

筆者:大橋悦夫

仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『「手帳ブログ」のススメ』がある。


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