継続は力なり――「再開力」を考える樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

「継続は力なり」だが、真実は「継続するには力が必要だ」ということ。この継続するための力が「再開力」なのである。何かを始めるのに必要な意志力にも匹敵することもある、この「再開力」を考える。

» 2007年10月11日 20時20分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 「継続は力なり」というが、真実は「継続するには力が必要」だ。機関車も最初にガクンと動き出すには大きな“始動力”が必要となるが、いったん走り出すと最小限のパワーで走り続けることができる。ところがちょっとでも止まってしまうと、これはもう最初と同じだけの始動力が必要となるわけだ。

 私たちの生活は、1日、1週間、1カ月といったように区切られているから、機関車のように全行程を一気に走り抜くことは難しい。1日にしても昼間は働いて夜は休むし、1週間であれば平日は働き、週末は休む。どうしても止まりながら走って行かざるを得ない。このいちいち止まった後、走り出すのに必要なパワーを「再開力」と定義したいと思う。

 何かを始めようとする時には、かなりの決断力が必要だ。たとえば仕事でも勉強でも、禁煙でも、禁ゲームでも、何をやるにしてもしっかりした意志の力が必要となるのは誰でも知っている。開始しなければ何も起こらないから、もうこれは絶対に必要な前提条件のようなものである。

 ただ、開始の意志力を十分に持っていても、開始した決意と目標が完成するまでには「継続力」が必要だ。我がアイデアマラソン研究所では、継続力は「再開力」の連続体ではないだろうかと考えた。

10日間継続するのに必要な再開力はどれくらい?

 何かを始めても、すぐに止まってしまう、止めてしまう人は、毎日の継続力――すなわち毎日の「再開力」が不足しているはず。おそらく「再開力」を意識していないからだろう。

 開始する意志力を10とすると、中断には0.1程度。それを再開するには、5程度のパワーが必要だと考える。中断するのは簡単だが、翌日も続けることを考えてみると妥当なところではないだろうか。開始して10日間の継続力を試算すると、開始に10、再開に5×9日で45(!)となる。いかに「再開力」の占める割合が大きいか分かるだろう。

 10日間継続するにも45の再開力が必要だが、いったん中断して数日間空けてしまうと、再開するための力はもっと必要だ。1週間も中断してしまえば、最初の開始と同じくらいの意志力が必要になるはず。中断に挫折感が加われば15程度。さらに中断期間が長くなると20単位、50単位とどんどん多くなってしまう。ますます、再開するのが難しくなるのが分かるだろう。

 物事をスムーズに継続していくためには、この「再開力」を最小限で進めるのが一番スマートな方法だ。「再開力最小化」を常に意識したい。すなわち中断期間をなるべく短くする――ということである。やむを得ず長期間放置してしまったことを再開するには、放置する直前の記録を見ること。それまでを思い出すことだ。毎回記録したほうがいいので、アイデアマラソンのように記録継続系の発想スタイルがオススメ。それまでの最後の記録をじっくりと眺めよう。だんだんやる気が沸いてくるはずだ。


 「禁煙から喫煙に“再開”するのはパワーが必要ないって?」そりゃそうだ。その後、再度禁煙するのには、前回よりもよほど大きな力が必要になるのは分かるだろう。

今回の教訓

継続は力なり、再開も力なり。


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著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら


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