若手社員の生活を一変させる「加算式ポイント仕事術」樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

世の中、ほとんどが積み上げのメカニズムで決まっている。毎日積み上げることは一見、非常に地味でツラく暗いことのように思えるが、どれだけ積み上げが進んでいるかを測定できれば、自分に対するごほうびと受け取ることもできるはずだ――。

» 2008年02月28日 14時45分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 世の中、ほとんどが積み上げのメカニズムで決まっている。会社の仕事の大半は積み上げからできている。営業も英語会話の練習も貯金も愛情も積み上げて行く必要がある。ダイエットもマイナスの積み上げだ。

 朝の知的時間も当然ながら積み上げ対象となる。毎朝、自分の時間を半時間でも考える時間に費やして、自分の知恵をアイデアマラソンで積み上げていこうというのが、筆者の主張である。

 毎日積み上げることは一見、非常に地味でツラく暗いことのように思えるが、どれだけ積み上げが進んでいるかを測定できれば、それを自分に対するごほうびと結びつける事も可能となる。毎日、何か考えて、ノートに番号をつけて積み上げていけば、ほとんど失うものなしにどんどん増えていく。あなた自身の知恵がどんどん積み上がっていくのだ。

 積み上げていくのは、単に朝の思考だけではない。朝に英語会話のラジオを聞いていたり、ジョギングする人もいるかもしれない。家の犬を散歩に連れて行く事もあるかもしれない。夜に資格の勉強をしている事もあるかもしれない。読書や、素晴らしい映画を見る事もあるかもしれない。

 これらすべてのあなたにとって、大切な積み上げ項目を、コントロールするシステムが、マラソンシステムである。マラソンシステムは、アイデアマラソンの下部構造である。アイデアマラソンで、あなたが持ち始めたノートを活用してマラソンシステムのマイレージを記録していく。

 筆者の場合は、ドトールやベローチェでエスプレッソを飲みながらアイデア出しをしても1点と計算していた。映画を見ても、まあまあなら1点、涙でも出そうことなら、2点にした。DVDも、劇に見に行っても1点。一定距離の自転車に乗っても1点。仕事以外で、友人と食事をして楽しかったら1点。旅行に行っている間は、1日ごとに1点を追加していくわけだ。

若手編集者O君の生活

 ここに某出版社の若手編集者O君がいる。

 彼はとにかく忙しい。連日夜中まで仕事をして、ひいひい言っている。帰宅するのは12時35分ころ。夕方ジャンクフードを食べた後だが、冷蔵庫の中の残り物を食べて、ひっくり返って寝るだけ。

 朝は昨日遅かったというだけで、時差出勤。会社に着くと、仕事が山のようにたまっている。書類も雪崩警報が出ている。そこに、担当している団塊世代のごちゃごちゃ訳の分からないことを書いてくるコラムニストがいる。彼の原稿を見て、あーだこーだとやっていると、もう人生がはかなくなってくる。こっちも言い返すと、さらに言ってくるから始末が悪いし、非常にムカツク。

 「もう勘弁してほしい」。午後3時。遅く昼を食べると、夕方はピッツアの出前。こうして、また帰宅は12時過ぎてしまう。これが1年続くのだ。

 基本的には、これがO君のパターン。担当しているコラムニストの影響があったのか、O君はマラソンシステムを導入した。そして1カ月。彼のマラソンシステム日記から1日のスケジュールを再現してみた。

2月21日(木)
1 朝、出発限界時間より40分前に起床 1ポイント
2 テレビを見なかった。その代わりに日記とアイデアマラソンを20分間 1ポイント
3 駅まで自転車に乗った(いつもは、エエイとばかりタクシーに乗っている) 1ポイント
4 電車の中で仕事本を読む 1ポイント
5 いつもより20分早く会社の近くに着き、ドトールで予定やら仕事の進め方を考えた 1ポイント
6 昼は少し早めに食べて、12時45分から15分仮眠。これで午後も眠くはなるまい 1ポイント
7 仕事が信じられないほど調子よく進んでいる。午前中の段取りがよかった。こわーい編集長の機嫌もよい。「君、少し変わったかね」なんて言っている。例の団塊コラムニストも、今日は一発どやしつけてやった。電話口でシュンとしていた 1ポイント
8 夕方めずらしくK子から電話で「ダメモトだけど、映画行かない」「いいよ」と出かける余裕がある。2年ぶりだぜ。K子推薦のラブストーリーに不覚にも涙 1ポイント
9 映画の後、K子と食事。久しぶりのフルコースと充実会話。マラソンシステムのことを話したら、「5万ポイントを達成で、お祝いのキスをあげるわ」と約束! いつになるんだ。5万ポイントは! 1ポイント
10 帰りの電車もハイになり、読書 1ポイント
11 帰宅したら11時半。いつもより10倍充実していて、1時間も早い! 12時前の就寝 1ポイント
今日の合計 11ポイント(始めてから1カ月で総計280ポイントのマイレージがたまった。5万点までは道のりは遠い……)

 こんな調子で、自分に良いというのを、自分勝手に、自分手前に考えて、マイレージを加算していけばよい。だから気分はいつも悪くない。それが数千、数万とたまってくると“ごほうび”になるわけだ。

 通常では家族、特に配偶者がこのあたりを配慮するのが、世界の常識。――であるが、日本の家庭は冷たいことが多いので、自分でごほうびをどんどん用意しよう。筆者もマラソンシステムのポイントを日記代わりに書いている。すでに4500日以上続けてきた。今では毎日7ポイントほど加算しているのだ。

筆者のポイント追加基準
1 アイデアマラソン 1日の発想16個で1ポイント
2 アイデアマラソン追加ボーナス 1日の発想32個でさらに1ポイント
3 アイデアマラソン追加ボーナスその2 1日の発想48個でさらに1ポイント
4 アイデアマラソン追加ボーナスその3 1日の発想50個以上でさらに1ポイント
5 今日のアイデア出しを午前中に終わらせる 1ポイント
6 ドトールやベローチェ、スタバなどで仕事をする 1ポイント
7 映画、DVD、劇などを鑑賞する 1ポイント
8 旅行、会食 1ポイント
9 自転車、水泳などのスポーツ 1ポイント
10 エッセイ(1300字)を書く 1ポイント
11 原稿の見直し作業 1ポイント
12 孫の顔を見た 1ポイント

今回の教訓

積み上げを取り崩すことのないように――。


関連キーワード

アイデア(発想) | 出版 | 仕事術 | 人材 | 研修


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

好評販売中の「ポケット・アイデアマラソン手帳'08」。1年間に1000個のアイデアを書きとめよう

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ