ブロガーがうつの“駆け込み寺” ネットでリアルに助け合いもう大丈夫、あなたを救う「うつ対策119番」(2/2 ページ)

» 2008年06月02日 18時57分 公開
[豊島美幸,ITmedia]
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まさかのうつ発症経験、「ブログ療法」につながる

 現在、「意識構造/社会構造アナリスト」という肩書きで活動中の野口さん。これまで専門誌の編集や人材派遣、システム開発などに従事してきた。激しいうつに襲われたのは20年以上前。子どもが生まれたばかりで働き盛りの32歳だった。ある日突然、「激しい心の揺れ」に襲われて倒れる。当日も直前まで普通に働いていたが、急遽入院、休職、退職して療養したという。「まさか自分がうつになるなんて全く思わなかったですね。俺の頭はどうなっちゃったんだろう、これは自分じゃないってパニックになりました」

 野口さんの知る限り、薬を処方する医師は体の症状には対応するが心はケアしてくれない。かといって心をケアするカウンセラーは、話はよく聞いてくれるものの、具体的な解決策を提案してくれない。もどかしさを感じた。

 そこで「具体的な解決ツールが必要だ」と思い立った野口さんは、自分の実体験などを元にうつ病を客観的に分析。その結果、「ブログ療法」というツールが効果的なのでは、と思うようになった。

うつを経験したら強く、優しくなる

「『うつ』なこころを強くするブログの力」(明日香出版社刊)。2008年5月に発刊されたばかり

 ブログ療法については、野口さんが書いた「『うつ』なこころを強くするブログの力」(明日香出版社刊)に詳しい。そのほか2005年10月に「『うつ』な人ほど強くなれる」(同)、2006年11月に「『うつ』な人ほど優しく強くなれる」(同)などを出版し、反響を呼んだ。このタイトルの真意は――。

 「発症当事は分かりませんでしたが、今考えるとコミュニケーション能力がなかったことが原因ですね。そのころは仕事のできない人間をスパッと切り捨てて前進するタイプでした。『付いて来い、じゃなきゃぶった切るぞ!』って。リーダーシップを完全に吐き違えてました。それで気が付くと誰もいなくなって……絶望したんでしょうね。うつになって初めて人の心の痛みが分かるようになりました。だから後ろを振り返って、人の痛みを察しながら進むようになりましたね。優しくなったと思います。優しいと自然に人が付いてくるからリーダーシップを取れる。だから強いんです」

 もともと自分が強い人間だという自覚はあった。「うつでもっと強くなりましたね。うつの苦しみに比べたら、ほかの苦しみなんてどうってことないですよ」。そんな野口さんでも、いまだに症状が出ることがある。「年2〜3回。震度3くらいかな。でも日常はちゃんとこなせますから大丈夫です」

 今後は北海道や沖縄など全国7〜8カ所に、誰かの家ではない正式な避難所を作る予定だ。「だって自然の中にいたら、気持ちが晴れるしょう? 全国に7〜8カ所作りたいですね。もし協賛できる方がいたらぜひご連絡ください」。その後はどうするのだろう。「あとは後進の人たちに任せるかもしれません……まだ未定です」。ブログ開設から2年。バーチャル、リアルの避難所を作り、治療の仕方を標準化し、人材を育成する――そんなうつ病全面サポート体制を実現するために奔走する日々は、しばらく続きそうだ。

 パートナーや家族などが回りにいなかったり、いても「甘えてる」などと言われてしまい、理解が得られない人、孤独な人には、バーチャルな「ブログ療法」が、リアルな救いの手になるかもしれない。

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