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» 2008年06月27日 11時08分 UPDATE

目的を達成する説得法:第1回 「他人のため」は「自分のため」 (1/2)

自分のしたいことを認めてもらうため、相手をどう説得していますか? 今回から4回にわたり、上司や会社、家族などを説得する方法を見ていきます。

[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]

 これから自分のしたいことを上司や会社などに認めてもらう方法を紹介しますが、今回は具体的な方法に入る前に、まずコミュニケーションについての基本を押さえておきましょう。

 他人とのコミュニケーションには、大きく2つの目的があります。まず1つ目が「自分のため」、2つ目が「相手のため」です。


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意思を伝えて協力を得る――他人とコミュニケートするのは「自分のため」

 まず自分のためのコミュニケーションでは、相手に自分の思いを伝えることが目的です。以前、言葉の分類でマンドとタクトについてお話しましたが、マンドが要求やお願いをすることで、タクトは説明することです。「これは名刺ですね」というのはタクトです。名刺ですね、と言われて腹を立てる人は、まずいません。

 ところが「1万円貸して」と言われると、腹を立てる人が出てきます。「1万円貸して」はマンドです。暑い中、「外を走ってきて」というのもマンドですし、「これはやり直し」とか「今日、5件契約を決めてきて」というのもすべてマンドです。マンドはトラブルが起きやすいのです。「今日、晴れているね」「今日は暑いね」といったタクトに怒る人はいませんね。ところが「暑いけど、外回りに行ってきて」と言われると、「えーっ!」となるわけです。

 人に何かをお願いする、もしくは相手からお願いされたときに断るためには自分のためのコミュニケーションが必要なのです。そして、自分のためのコミュニケーションには、2つの要素があります。1つが、自分の意見や考え、思いを伝えるもの。2つ目が、協力してもらうためのものです。

 例えば上司だったら、「自分はこんな会社にしたい」とか「キミにこれだけ売り上げを上げてほしい」とか「これをこういうふうにしてほしい」というように、自分の思いを伝えます。そして、「そのために、キミにここを手伝ってほしい」といって、協力してもらいます。

 これは夫婦でも家族でも同じです。「僕はこういう家庭を築きたい。だから、キミにはこんなふうに笑顔でいてほしい」とか「私はアットホームな家庭を作りたい。だから、息子のお前にもこういうふうにしてほしい」というように、どんな人にも自分の思いを伝えて、しかも協力を得る場面が出てきます。

「相手のため」のコミュニケーション――ポイントは立場とニーズ

 他人とのコミュニケーションのもう1つの目的は、「相手のため」です。こちらも2つの要素があり、1つは、相手の立場に立つものです。例えば、相手が部下だったら、「この部署に来たばかりだから、この件には焦るかもね」とか「ここはちょっと心配になるかもね」「この作業はうまくできないかもね」といった具合に、その人の立場に立った対応です。

 もう1つの要素が、相手のニーズを満たすものです。「音楽をやっていたのなら、こういうことは得意かもしれないけれど、ビジネスの部分は分からないかもしれないから、ここは教えてあげよう」とか「これに関する本を貸してあげよう」といった対応です。ここで、ちゃんと相手の立場に立てていないと、本を貸すにしても50冊くらいポーンと渡して、「来週までに読んできて」なんていうことになる。まだビジネスに慣れていない人に50冊も読めなんて無理ですね。相手の立場に立ってニーズを満たさないと、ただの強引な押し売りになってしまいます。

ダメなのは、中途半端な「相手のため」「自分のため」

 昔の上司は、自分のためのコミュニケーションは、大体よくやっていました。なぜなら、あまり人のことを考えなくてよかったからです。「言う通りにやっていたら間違いないんだから、キミは何も言わずにその通りやれ」とか、「私はこうしたい。だからキミはこれをしろ!」だけでOKでした。

 ところが今は、どうもそれではうまくいかなくなり、自分を主張できなくなっている上司がだんだん増えてきています。言うことがズレていたり、当たっていてもいろんな理由で反発されたりする。そんなとき、彼らは下手に部下の立場に立とうとするのです。「こう言ったら、たぶんこう思うだろうな」とか「デートで帰りたいというのを、ダメだといったらがっかりするだろうな」というように、相手の立場に立つ。

 しかし、結局、十分ではないのです。しかも、自分のためのコミュニケーションができていません。つまり、相手のためのコミュニケーションも、自分のためのコミュニケーションも、どちらもできていないのです。どうしていいのか分からない状況になってきていますね。

 マンドとタクトでいえば、マンドに関するコミュニケーションが、どれも脆弱(ぜいじゃく)になってきています。指示命令をしない。でも、しないわけにはいかないから、最小限にする。そのときに中途半端に部下の立場に立って、中途半端に相手のニーズを満たしながら、中途半端に自分の思いをちらつかせ、中途半端に協力している。全部中途半端なんですね。

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