【番外編】作ったのは普通の会社員5人――ブログを書くだけで苗木が育つ「グリムス」ひとりで作るネットサービス(1/2 ページ)

ブログを書くと自動的に苗木が育つ。しかも育った樹の本数に応じて実際に植林されるという「グリムス」。作ったのは笹森さん、浪江さんをはじめとするごく普通の社会人5人。その経緯と目的とは?

» 2008年07月16日 18時30分 公開
[田口元,ITmedia]

 ひとりで作るネットサービス第29回は、番外編としてブロガーの「マイクロエコアクション」を支援するグリムスを取り上げる。ブロガーが記事を書けばブログパーツ上で苗木が育ち、育った樹の本数に応じて、実際に植林活動が行われるという仕組みだ。1万人を超える会員を擁するこのネットサービスを、普通の会社員5人組が作るに至った経緯とはどういったものだろうか。

「グリムス」の画面

何かしなくちゃ――なけなしの小遣いからサーバをレンタル

 「正直、月500円でも出費は痛いです。でも背水の陣を敷いてでも、どうしてもやりたかったのです」。グリムスを立ち上げたメンバーの1人、笹森良(ささもり・りょう)さんはそう話す。

笹森良さん

 結婚3年目の笹森さんが自由にできるのは月々のわずかなお小遣いだけ。この中からやりくりしてでも何かネット上でインパクトのある活動をしたかった。

 笹森さんは1998年から仕事や趣味でネットに携わってきた。もうすぐ10年がたとうとしている。「何かをしなくちゃ」という漫然とした思いが募り、とりあえずドメインを取得してみた。まだサービスは開発されていなかったが、思い切って月500円のサーバも借りた。

 笹森さんはネット業界にはいたが、主にプロデューサー業を行ってきた。プログラミング言語を見聞きしたことはあるが、自分で手を動かせるほどのスキルはなかった。「本当は自分で作れたらいいのでしょうが……そう思ってPHPの本を1冊買ってきましたが、最初の5ページで挫折しました」

 自分の思いに賛同してくれて、一緒に作ってくれるエンジニアはいないだろうか……そう考えた時にふと思い浮かんだのが、すぐそばの机に座っている同僚、浪江正治(なみえ・まさはる)さんだった。「ある日、彼を呼び出して自分がやりたいことをアツく語りました。一緒にできないかな、と持ちかけたら、快くOKしてくれたのです」

 ただ、浪江さんもネットサービスの技術にそれほど詳しいというわけではなかった。HTMLやFlash、Flashで使用されているスクリプト言語のActionScriptをいじることはできたが、サーバ側の言語についてはほとんど知識がなかった。「笹森から話を聞いた後にPHPを勉強し始めました。いくつか苦労した点もありましたが、なんとか2カ月ほどでグリムスの原型を作り上げることができました」

エコに興味がなくても、書けば自動で“エコ活動”

 彼らが作り上げたのは、ブロガーが記事を書くたびに苗木が育っていくというブログパーツ。しかも育った樹の本数に応じて実際に世界のどこかで苗木が植えられる仕組みになっている。つまり、ブロガーが記事を書けば書くほどエコな活動ができるのだ。

 「こういってはなんですが、環境情報サイトだけでは十分ではないと思うのです。環境問題に興味のある人は見るでしょうが、その他の人はほとんど見ていないのではないでしょうか。本当にすべきは環境問題に興味のない人でも少しずつ参加していけるような仕組みだと考えています」。笹森さんはグリムスの狙いをそう明かす。

浪江正治さん

 本当はブログパーツではなくてコミュニティーサイトを作りたかった、と笹森さんは考えていた。しかし浪江さんとブレストしているうちに考えが変わってきた。浪江さんはYouTubeをはじめとする数々のサイトで「ブログに張り付ける」という仕組みが普及し始めたことに注目していた。

 「すでにたくさんのコミュニティーサイトがありました。新しいコミュニティーを作ってわざわざ登録してもらう、という仕組みはハードルが高いように感じました。そこでブログパーツに思い至ったのです」。笹森さんはそう打ち明ける。

 浪江さんが開発する間、笹森さんは。ブログパーツのデザイン、サービス説明やユーザーに送るメールの文面、規約など、ユーザー周りの静的なコンテンツを作り込んでいった。「すでにサーバ使用料を払い始めていたので、1日でも早くリリースしたかったのです」。笹森さんが決めたリリース日は、浪江さんを呼び出した日から3カ月後の2007年の10月1日。「この日にはどんな状態でもリリースしようと決めていました。そうしないと進まないですから」

 システムが完成し、無事にグリムスをリリースできた10月1日。当然ながら登録者数はゼロだった。「ブログを持っていない友達にも電話しまくりましたね。『今からブログ作ってグリムスに張ってくれよ』って」。笹森さんは笑いながらリリース当初の様子をそう教えてくれた。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ