ほめても叱っても部下は育たない部下をやる気にさせて育てる指導術(3/3 ページ)

» 2008年09月08日 08時30分 公開
[水野浩志,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

受け入れる能力と認める能力を鍛える2つの方法

 とはいえ、こういった心構えや能力というものは、そうですかと話を理解するだけでは、決して身につくことはありません。ある程度の時間をかけて訓練することによって、はじめて身につけられるものであります。

 私自身も、現在まだまだ修行の身でありますが、その中でも特に効果があった方法をお伝えしますと、

  • 自分に向けての言葉遣いを変える

 というのをお勧めいたします。頭では理解していても気持ちがそうならない、という状態というのは、外から来る刺激に対して特定の反応をしてしまうという習慣であるケースが多いようです。例えば、部下が自分の思惑と違うことを言った、という反応に対して、「あいつは間違っている」と思ってしまう、ということなどが、これに当たります。

 こういった、考え方の癖を直すためには、気の持ちよう、という曖昧な形ではなく、具体的な行動を取り入れた方が効果的です。その一番手軽な方法は、自分の言葉遣いを直していく、ということなんです。

 例えば、私の場合、相手を受け入れるために、

 「おお、そう考えるんだ。なるほどねえ〜」

 という言葉を使うようにしています。誤解しないでいただきたいのですが、これは相手に対して言う言葉ではなく、自分自身に対して言う言葉です。もちろん、相手に言ってもいいのですが、この言葉の本意は、相手に伝えるのではなく、自分自身にそう思うように伝えるメッセージなのです。

 もちろん、あなた自身はその彼の考えに納得はできないでしょう。でも、彼はそう考えているのだ、ということを、まずは自分が受け入れていくのです。最初は違和感があるはず。自分の受け入れたいものとは違うのですから。でも、これを繰り返していくとで、「自分とは違うが、彼はそう考えているのだな」ということが、だんだん無理なく受け入れられてくることと思います。

 認める能力を身に付けることも、同じように、自分自身に口癖を作ることで、その力を身に付けていくことができるでしょう。私の場合、認めるということを身に付けるために、

  • 外に物差しを置いた比較の言葉は使わないようにする

 ということを心がけています。

 たとえ世間相場の平均が70点で、部下の実力が20点だったとしても「20点“しか”取れていない」という言葉を使って感情的にならず、「20点である」という言葉を使って、事実をフラットに受け止めるようにしています。そして、翌日21点という変化が起きたら、「“まだ”21点しか」と受け取らず「昨日より1点上がった」と認めるようにしているのです。

 こういった言葉を使っていくことにより、徐々に部下を受け入れ、そして認めることができるようになっていくのです。そうすると、部下のささやかな成長も、あなたにとっての喜びとなります。部下に大してのおべっかでもヨイショでもなく、心から、その成長に喜びを感じるようになるはずです。

 そんなあなたの喜ぶ姿を部下が見たら、彼らだってきっと喜ぶことでしょう。そして、自発的に自らを成長させようという好循環に入ってくれるようになるかもしれません。

 さて、こうして部下を指導するための下地作りはできました。ここから部下をどうやって成長させていこうか、という話になりますが、それはまた次回――お楽しみに。

著者紹介 水野浩志(みずの・ひろし)

 マイルストーン代表取締役。「社会に活き活きと働く大人たちを生み出す」をスローガンに掲げ、リーダーシップ・モチベーション創造・自己表現力養成をテーマにした企業研修や公開セミナーを実施。また、研修・セミナー講師向けに、具体的な成果を生み出す効果的なカリキュラムの構築手法や、講師としてのマインド・人間力創りの指導も行っている。現在、日刊(平日)で、メールマガジン「1回3分でレベルアップ! 相手の心を掴むトーク術」を発行中。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ