質問すると、その直接の答えではなく、遠回りして状況を語り始める――。こんな部下がいる場合、相手を責めるのではなく、言い出しにくい雰囲気になっていないかを振り返ることが重要だ。
職場のコミュニケーションに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。「上司にこんなことを言ったら怒られるかもしれない」「部下には気をつかってしまうし」――。
本コラムでは、職場で役立つコミュニケーション術をご紹介します。具体例を挙げながら「なるほど! こういうやり方があるのか」「これなら自分でもできるかもしれない」と感じてもらえるよう、筆者が見聞きした出来事をちりばめています。
明日から……ではなく、いますぐに試すことができる「コミュニケーションのヒント」をご紹介しましょう。
質問されたらその答えを述べればいいだけなのに、人は意外にすぱっと答えないものだ。
ある時、こんなことがあった。
顧客とのアポに先立ち、できれば電話で伝えておきたいことがあった。案件を担当している後輩が先方に何度か電話を入れるものの、出張などでなかなかつかまらないと聞いていた。そうこうするうちに訪問日の当日になった。
待ち合わせ場所で後輩と落ち合い、すぐさま「あの件はお客様に伝えられたの?」と尋ねると、彼はこう返事した。
「昨日まで何度かお電話したのですが、先方がとてもお忙しいらしく、全くつかまらなくてですね。 同じ部署の方で事情が分かる方もいらっしゃらないようで、ご本人に説明したいとは思ったのですが……」
「で、結局、話はできたのかな?」
「あ、すみません。まだお伝えできていません」
「分かった。じゃ、そこから説明を始めないと、ということだよね。それが分かればいいです。電話で話せたかどうかを尋ねているのだから、それをまず答えてね」とやんわり指導した。
この例のように、質問されると、その直接の答えではなく、遠回りして状況を語り始めるというのはよくあることだ。
先日はあるマネージャーがこんな例を話してくれた。
「部下に、タスクの進捗を尋ねるでしょ? スケジュール通りなのか、進んでいるのか、遅れているのかと質問するのだけれど、部下の答えが長いんだよね。『時間通りに進めようと思ったのですが、急なトラブル対応があったり、お客様から新たな急ぎの依頼ごとが発生したりしまして、それで、他の仕事と調整も図ってはいるものの……』と延々と話すわけ。タスクの現状ではなく、長々といきさつを説明するんだ。質問にはシンプルに答えればいいのに、どうしてそう遠回りするんだろうね」
別の例だ。
OJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)担当をしている中堅社員が、配属されたばかりの新人からのメールに苦笑していた。
「新人から、すごーく長いメールが届くんです。読んでも意味が分からなくて、何だろう? と疑問に思いつつ読み続けると、最後のほうに、“だからできていません。どうしましょう?”と書いてある。結論から先に書いてほしいんですよね。“締切を伸ばしてもらえないか?”と先に書き、“理由は……”と書いてくれたらすぐ分かるのに、だらだらと状況説明が長くて主旨がつかみづらい」
いくつかの例を挙げたが、若手に限ったことではないかもしれない。実は、私自身もそういう返答をしそうになることがままある。例えば、「○○の書類、提出しましたか?」と上司に質問される。『あ、まずい』と思うと、「他のことで忙しくて……」という言い訳がまず頭に浮かんでしまう。しかし、こういう答え方はいけないとすぐ気づき、「まだ出していません。申し訳ないです。午前中に提出します」などと答えるようにしている。
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