やむなく解雇せざるを得ない場合、トラブルはできるだけ避けたいもの。特に、予告なしに解雇できる「解雇予告除外認定」を受けるために必要な手続きについて4回にわたって解説していきます。
「企業実務」は、経理・総務・人事部門の抱える課題を解決する月刊誌。仕事をすすめるうえで必要な実務情報や具体的な処理の仕方を正確に、わかりやすく、タイムリーにお届けします。1962年の創刊以来、理論より実践を重んじ、“すぐに役立つ専門誌”として事務部門の業務を全面的にバックアップ。定期購読はこちら。
本記事は企業実務のコンテンツ「事務ごよみ」から一部抜粋・編集して掲載しています。
多くの会社にとって「社員を解雇する」というのは、相当な決断だと思います。そもそも、解雇する前提で社員を雇い入れている会社はないはずですから、いざ社員を解雇しなければならない状況になったときにどうすれば良いのか、戸惑われることでしょう。
解雇が会社にとって大きな決断であるように、言い渡される社員にとっても大きな衝撃を受けることになります。これまで社会保険労務士としてさまざまな相談を受けてきましたが、その中でも、解雇は労使トラブルに最も発展しやすい事案といえます。トラブルを防ぐためには、法律で定められた規制にのっとって、手続きを慎重に進めなくてはなりません。
本記事では、解雇の基本ルールを確認した上で、その一部適用を免れるための「解雇予告除外認定」の手続きを行う際のポイントについて解説します。
「解雇」とは、会社側からの一方的な労働契約の解除のことを指します。会社と社員は契約関係で結ばれ、労働契約は「期間の定めのある契約(有期労働契約)」と「期間の定めのない契約(無期労働契約)」の2通りに分かれます。
有期労働契約の場合、期間満了によって自動的に契約は終了します。原則として、期間途中の契約解除(解雇)はできず、解雇は「やむを得ない事由」がある場合に限られています(労働契約法17条)。
ですので通常、解雇の問題を考えるときは、無期労働契約のケースで検討することとなります。
無期労働契約の場合、民法の原則から考えると、契約解除は契約当事者のいずれからも、理由を問われることなくできるのですが、労働者保護のため、会社側からの契約解除である解雇をする場合については、労働基準法(以下「労基法」といいます)で一定のルールが定められています。
まず最初に、会社が社員を解雇しようとする際に確認しなければならないことが3つあります(図表1参照)。
さらに、これらの点をクリアして、解雇を実行する際にもルールが定められています(図表2参照)。会社が社員を解雇する場合は「解雇日の30日以上前にその予告を行うこと(解雇予告)」「予告を行わない場合は30日分以上の平均賃金を支払わなければならない(解雇予告手当の支給)」というルールです(労基法20条1項)。この予告日数は、1日分の平均賃金を支払った日数だけ短縮することができます(労基法20条2項)。
ただし、解雇予告が免除される場合があります。「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」または「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」(労基法20条1項但書)で、所轄の労働基準監督署長の認定を受けた場合(労基法20条3項)です。
これら「解雇予告除外認定」の申請は、原則として、解雇の意思表示をする前に済ませておく必要があります。
次回は「解雇予告除外認定」を受けられるケースについて解説します。
特定社会保険労務士。著書に『トラブルにならない「会社に有利な」ルールの作り方』『トラブルにならない社員の正しい辞めさせ方』(いずれも日本実業出版社)などがある。著者オフィシャルサイト
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.