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» 2014年12月10日 06時00分 UPDATE

ストップ! 解雇トラブル:「解雇予告除外認定」、申請時に注意すべきこと

「正当な手順を踏んで『解雇予告除外認定』を受けられたので、何も問題ない」と考えるのは軽率です。最終回は「解雇予告除外認定」にまつわる勘違いと注意すべきことや心構えについて解説します。

[企業実務]

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 本記事は企業実務のコンテンツ「事務ごよみ」から一部抜粋・編集して掲載しています。


「解雇予告除外認定」申請を行う場合の注意点

 これまで3回にわたってご紹介してきた「解雇予告除外認定」についての解説(第1回第2回第3回)。最後は注意点と、よくある勘違いについて説明しましょう。

1. 「解雇予告除外認定」を取れば、「労基署お墨付きの正当な解雇である」ということではない

 「解雇予告除外認定」はあくまでも、労基署という行政機関が出す、労基法20条に定める「解雇予告」という手続きを免除する認定でしかありません。「解雇権の濫用(らんよう)ではないことを労基署が認めている」ということではありませんのでご注意ください。

 解雇によるトラブルの中でも、お金と時間がかかるのは、労働契約法16条に定める解雇権濫用をめぐり、解雇無効を社員に訴えられるケースです。理論上は「解雇予告除外認定」を取ったからといって、社員が司法機関に対して「解雇無効」を訴えるのを止めることはできません。裁判所ではあらためて、その解雇理由の相当性が審理されることとなります。ただし、労基署が「解雇予告除外認定」の決定を出す過程で、社員はいったんその事実を認めていることになりますから、認定を取るということは、あらためて社員側から「解雇無効」を訴えられるというリスクが軽減されるという意味はあると考えられます。

2. 「労働者の責に帰すべき事由」は就業規則に定める解雇事由には左右されない

 「労働者の責めに帰すべき事由による解雇」といえば、就業規則に定める懲戒解雇を思い浮かべる方も多いかもしれません。「解雇予告除外認定」は、予告期間をおくという労働者保護を必要としないほど、契約解除に対して労働者の責に帰すべき事由がある場合と定義されていますが、その事由については「解雇予告の除外認定を受けられるケースとは」で説明したように限定列挙となっています。

 昨今、「トラブルメーカーの社員から会社を守るため」という理由付けで、懲戒解雇事由を細かく規定している会社が増えているように感じますが、あくまでも会社が定めた基準ではなく、行政機関が定めた基準で判断がなされる、という点に注意してください。

 なお、「解雇予告除外認定」を取ることができなくても、30日前の予告、もしくは解雇予告手当の支払いを行い、会社の定める懲戒基準に沿って懲戒解雇を行うことは可能です。

3. 「解雇予告除外認定」がされるまで社員の解雇ができないわけではない

 通常「解雇予告除外認定」の申請をしてから認定がなされるまで1週間から3週間程度かかります。認定がなされるための要件として「双方当事者からの事実関係の確認」をし「認定事由に該当する事実があると労基署長が確信した場合」とありますので、社員が全面的に事実関係を否認している場合は、「認定」は下せないこととなります。

 そういった場合、会社側としては「解雇予告除外認定」を取ることには固執せずに、就業規則の規定に基づき、通常の解雇手続きを取る(予告期間を設ける、もしくは予告手当を支払う)ことが実務上はほとんどです。

4. 社員自筆の「経緯書」「始末書」「顛末書」などを必ず取っておく

 労基署の事実認定では、会社から提出された経緯書や懲戒委員会の議事録、さらに社員からの聞き取り調査などから、総合的に認定事実に該当する事実があるかどうかの判断を行います。

 聞き取り調査の際は、社員本人が書いた事実関係を認める内容の文書があると、裏付けとなり、会社側にとっては有利になります。万が一、事後に解雇の有効性をめぐる争いになった場合にも役立ちますので、社員の非違行為があった場合は、会社として経緯を記録するだけではなく、本人にも文書を書かせるようにしましょう。


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 繰り返しになりますが、「解雇予告除外認定」というのは、解雇をする場合の「解雇予告」という手続きの免除という役割でしかありません。除外認定を取れたからといって必ずしも、事後のトラブルを回避できるわけではなく、除外認定が取れなくても、問題なく解雇ができる場合もあります。

 その一方で、解雇という決断が、当事者である社員やその家族、そして周りの社員に与える影響は非常に大きなものです。これまで築いてきた会社と社員との信頼関係が根本から揺らぐといっても過言ではありません。

 早急に決断を下す前に、まず「解雇回避」のためになすべきことはすべて行ったのかどうか、本当に「解雇」しか方法はないのかをよく検討したうえで、「これならば、解雇になっても仕方がない」と社員本人のみならず、周囲も納得できるよう手を尽くしてから、法的な手順に沿って実行するよう心がけてください。

著者プロフィール:井寄奈美(いより なみ)

特定社会保険労務士。著書に『トラブルにならない「会社に有利な」ルールの作り方』『トラブルにならない社員の正しい辞めさせ方』(いずれも日本実業出版社)などがある。著者オフィシャルサイト


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