日本全国どこへでも、翌日配達で荷物を送れる宅配便。その最大手であるヤマト運輸を事業会社に持つヤマトホールディングスが取り組んでいるのが、物流を「コスト」から「価値を生み出す手段」に進化させる「バリュー・ネットワーキング」構想。その取り組みの最前線となっているのが、東京・大田区にある物流ターミナル「羽田クロノゲート」だ。
宅急便を提供するヤマト運輸は、現在日本全国に約70カ所のターミナル(各地域の営業所から届いた、または全国各地の営業所宛ての荷物の仕分け作業を行う拠点)を持っているが、羽田クロノゲートは、その中でも最新の設備を誇るだけでなく、新たな価値を生み出す様々な機能を有している。日本の物流事業の最新事情を取材した。
羽田クロノゲートは2013年秋オープン。羽田空港にほど近い東京・大田区羽田旭町にある。羽田空港だけでなく、東京港、横浜港、高速道路、JRの東京貨物ターミナル駅いずれからも近い陸海空の要所ということでこの地を選んだという。ヤマトグループの物流の要となっている最新かつ最大級のターミナルだ。
延床面積は19万7575平方メートル、といってもピンと来ないが、東京ドーム約4個分という広大なターミナルだ。敷地内の地域貢献エリアでは、スポーツ施設や保育所、障がい者を雇用したスワンカフェ&ベーカリーといった地元の人々のための施設を併設している。
8階建て(地上6階)の物流棟は、1〜2階が仕分けエリア(荷物の仕分けを行う、従来通りの宅急便のターミナルとしての機能があるエリア)、3階から上が付加価値機能(後述)を提供するエリアとなっている。まずは1〜2階から見ていこう。
仕分けエリアに入ってみてまず驚くのは、人の姿がほとんど見えないこと。大型トラック104台が同時に着車できる巨大ターミナルであり、実際に目の前をたくさんの荷物が流れていくのだが、荷物の仕分けは多くの部分が自動で行われており、人力が必要なところがほとんどないのだ。
羽田クロノゲートに到着した荷物は、仕分け用のコンベアに載せられた後は、人の手をほとんど介さなくても的確に必要なところへ仕分けされる。まず、物流棟2階には、全長約1メートルの「クロスベルトソータ」が張り巡らされており、施設内で仕分けられる荷物はこのコンベアで自動的に移動していく。このコンベアは、進行方向に動くことに加え、ベルトの底面が進行方向に対し直角にスライドする「クロスベルトソータ」という仕組みを採用しており、これによって旧来のダイバータを活用した仕組みよりも荷物に負荷をかけることなくの宛先別の振り分けを行えるようになっている。
各営業所からやってきたトラックから下ろした、ロールボックスパレット(RBP)と呼ばれる荷物の載ったケージが実際の仕分けエリアに移動するところも自動化されている。さらに、RBPから荷物をベルトコンベアに載せていく作業には、人間の作業のみならずロボットアームなど最新鋭の設備が実験的に導入されている。このように多くの作業を自動化、機械化することにより、荷物を仕分けられる量とスピードが大幅に向上し、同時に省人力化も実現した。従来のターミナルでは1時間で仕分けられる荷物の数は約2万4000個だったところを、羽田クロノゲートでは最大で約4万8000個、これまでの2倍の量を処理できるようになり、さらに作業にかかる人件費も最大で約4割削減することができたという。
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