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» 2015年08月17日 08時00分 UPDATE

池田直渡「週刊モータージャーナル」:自動車の「セグメント」とは何か? そのルーツを探る (1/6)

国内外のメーカーを問わず、自動車を分類ときに使う「セグメント」。そもそもこれが持つ意味や基準とは一体何なのだろうか――。

[池田直渡,ITmedia]

 この連載を読まれている読者の方は、しばしば「新興国向けのBセグメント」とか「昨今Dセグメントが売れない」というように、「セグメント」という言葉を目にしているだろう。

 しかし、そのセグメントというのが一体何なのか、よく分からない場合もあると思う。そこで今回は一度基本に戻り、セグメントについてまとめてみたい。

 かつて、このセグメントは「車格」と呼ばれていた。我々がクルマを購入するとき、異なるメーカーのクルマを比較するのはよくあることだ。「ベンツのEクラスを買うか、ヴィッツを買うか」で迷う人はまあいないだろう。一般的には「アクアを買うか、フィットハイブリッドを買うか」というように、概ね同一カテゴリーに属するクルマを比べることになる。セグメントとは、端的には競合車をグループ分けする方法である。ではそのセグメントは何で決まるのか? 実はセグメントという便利なクラス分類ができる前はさまざまな苦労があったのである。

排気量で分ける考え方

 車のカテゴリーを印象的に表すものに排気量がある。例えば、5000ccのレクサスLSと、1300ccのヴィッツを並べれば誰が考えてもクラスが違う。だったら排気量別に並べればカテゴリーが分かるのではないかと思うだろう。しかし残念ながらそれはなかなか難しい。

トヨタ・ヴィッツの主力となる1300cc4気筒エンジン。1000ccは3気筒の低燃費仕様になる。3気筒は振動面で不利だが、1000ccで4気筒では、1気筒あたり排気量が小さくなりすぎて効率が悪化してしまうためだ トヨタ・ヴィッツの主力となる1300cc4気筒エンジン。1000ccは3気筒の低燃費仕様になる。3気筒は振動面で不利だが、1000ccで4気筒では、1気筒あたり排気量が小さくなりすぎて効率が悪化してしまうためだ

 排気量でセグメントを分けるのはそう簡単ではない。例えば、かつてのトヨタ・カローラと日産ブルーバードならどちらにも1500ccエンジンが存在した。ブルーバードはサニーより上級モデルに当たるのだが、これだと弟分のライバルと同じクラスに入ってしまって都合が悪い。

 今流に言えば、カローラとサニーはCセグメントで、ブルーバードはDセグメントだ。つまり排気量は車格の判定に際して参考にはなるが、決定的にクラスを決める役には立たないということだ。

 また、同じボディでも異なる排気量のエンジンが搭載されているケースの問題もある。ヴィッツに搭載されるエンジンは3種類で、1000cc、1300cc、1500ccがある。これを1000ccはAセグメント、1300ccはBセグメント、1500ccはCセグメントと分けるのでは実情にそぐわない。

 細かい話をすれば、実は多くの車種には中心排気量というものがあって、例えばヴィッツの場合、1300ccが中心になる。ラインアップの中で、特殊なスポーツモデルの「ヴィッツRS」を除外して3つの通常グレードがあり、その中でどのグレードでも必ず選べるエンジンは1300ccなのだ。そうやって中心排気量を割り出して並べればそれなりに序列は作れる。しかし例外がかなり多くすっきりしない。

 前述のレクサスLSなどは、4600ccと5000ccのどちらが中心かと言われても明確な答えはないし、昨今の小排気量ターボに至っては単純な排気量で判断できない。レースの世界ではターボエンジンにハンデをつけるためのターボ係数というものがあるが、これも1.4倍だったり1.7倍だったり、2倍だったりと、時期とカテゴリーによってさまざまである。つまり、過給エンジンを搭載した場合、「このクルマは排気量いくつ」と決めること自体が難しい。

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