“TSUTAYA図書館”にNO! 「新図書館整備計画」の反対運動が増えている理由スピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2015年10月06日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

今後の「図書館戦争」の戦局にも大きな影響

 こういう「効果」と選書問題や廃棄問題という負の側面を相対的に評価して「賛成」に票を投じた小牧市民もいたということではないのか。

 とはいえ、4倍差だろうが1.2倍差だろうが「負け」であることには変わりない。今回の住民投票の結果は今後の「図書館戦争」の戦局にも大きな影響を及ぼすだろう。

 まず考えられるのは、「新しい形の図書館をつくろう」という勢力が尻込みすることだ。指定管理者制度が施行されて10年。実はCCCはまだ「新参者」であり、最大手TRCだけではなく、紀伊国屋、丸善、マーケティング事業のヴィアックス、サントリーパブシリティサービスなどの民間企業やNPO法人なども参入している。

 にもかかわらず、これまで「紀伊国屋図書館に反対」なんて市民運動が起きたという話は耳にしない。CCCのようにヘタを打ってないということもあるが、「TSUTAYA図書館」のように話題になる新しい図書館を生み出していないということも大きい。そこへCCCが住民に「ノー」をつきつけられたとなると、「そら見たことか、やっぱり公立図書館なんて最低限のサービスでいいんだよ」と新しいチャレンジをしなくなってしまう恐れもある。

 それでは本末転倒だ。図書館の指定管理制度の根底にあるのは、民間のアイデアやノウハウで日本の公立図書館のあり方を変えていくことだからだ。

 2005年に文部科学省年にまとめた調査では、人口10万人当たりの公共図書館数でみると、ドイツが12.9、イタリアが10.5に対して日本は2.1。地域に根ざしているとは言い難い状況だった。一方、1館当たりの蔵書数は先進国と比較してもダントツに多い。つまり、地域社会に根ざしているとは言い難いものの、「本好き」にはたまらないのが日本の公共図書館なのだ。

 実際、2009年に策定された「新小牧市立図書館建設基本計画書」でも同じ問題が浮かび上がっている。市民の登録者は小牧エリアで17%、少し離れた北里エリアでは7.8%と1割にも満たないが、蔵書は右肩上がりで順調に増えている。「市民」の要望を聞くと、「もっと蔵書を充実してくれ」という声が多いからだ。

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