対中国だけではない? お金が欲しくて“魂”を売ったイギリス新連載・世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)

» 2015年11月05日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

英国はカタールに買収されかけている

 他にも英国がカネで骨抜きにされている国がある。中東の成金国家、カタールである。そして投資を歓迎するあまり、実は大変な状況になっているようだ。今、英国はカタールに買収されかけているとの批判もある。

 カタールは政府系ファンドなどを使い、特にロンドンのランドマーク的な不動産などにかなりの投資を行っている。英国の老舗百貨店であるハロッズはカタールの政府系ファンドが2010年に買収して所有している。ロンドン証券取引所の20%はカタールが所有し、ロンドンで若者に人気のカムデン・マーケットも20%を所有している。

 2013年にオープンした英国で最も高い超高層ビルのザ・シャードはカタールが所有し、ロンドンの最高級マンションであるワンハイドパークもカタールのハマド元外相が英国の不動産会社と共同で所有する。また2012年ロンドンオリンピックの選手村跡地に建てられた居住区もカタールの政府系ファンドが共同所有している。

ロンドンの最高級マンション「ワンハイドパーク」(出典:ワンハイドパーク)

 さらには英国王室にもかなり食い込んでいる。スコットランド北部にある「メイの城」はエリザベス女王が所有するが、その管理費は実質的にすべてカタールの首長が支払っている。またカタールの政府系企業は2014年、エリザベス女王に許しを得て、英国王室主催の競馬大会、ロイヤル・アスコットの公式スポンサーになった。同大会の300年以上の歴史で、スポンサーを置くのは史上初めてのことだ。

 といった具合に、カタールの英国への食い込み方は半端ないレベルなのである。そして2014年11月、キャメロン首相はカタールからさらなる投資を取り付けようと、訪英したタミーム首長と安全保障協定に合意して物議を醸した。

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