たいして儲かっていないのに、コンビニが「24時間営業」を止められない理由コンビニ探偵! 調査報告書(2/4 ページ)

» 2015年11月19日 08時00分 公開
[川乃もりやITmedia]

1人か、2人か――オーナーのジレンマ

 強盗に押し入られて単に金を盗まれるだけならまだしも、報道されるニュースの中には従業員の生命を脅かすような事件もある。コンビニの防犯体制として、深夜の2人勤務のほかに、防犯カメラや防犯ベル、カラーボールの設置などがある。また、深夜の時間帯はレジ内の現金を減らすなど、長年の経験からさまざまな知恵と工夫が織り込まれているのだ。

 知っている人もいるかもしれないが、コンビニには強盗事件に対する保険がある。本部で一括加入しているので、安い保険料で店舗の経営は守られている。実際のところ、強盗に遭っても金銭的な被害はさほどではないのだ。

 強盗に押し入られても保険がカバーしてくれるが、事件が増えれば保険料は高くなる。また、防犯をおろそかにし、強盗が入りやすい状況を作るということは、犯罪に協力しているともとられかねない。信用問題にも発展する可能性がある。深夜の時間帯に従業員が1人しかいないのは、防犯をないがしろにするような行為であり、商売人としては避けなければならないことなのだ。

 ここまで読んで「強盗などの犯罪を考えると、深夜の時間帯は最低2人はいないとダメだね」と思われるかもしれないが、実際はそう単純な話ではない。ほとんどのコンビニ経営者が抱えているジレンマがある。

 それは、「深夜勤務手当」だ。労働基準法でいう深夜時間帯とは、22時から5時までの間のことで、この時間帯は25%増しの賃金を支払わなければならないと定められている。

 タクシーの運賃や一部のファミレスでも深夜料金が設定されているが、これらは従業員に支払う深夜勤務手当が起因となっている。だが、コンビニでは深夜料金を設定していない。

 ここで整理してみよう。

  • 深夜の来客は少なく、売り上げも低い
  • 深夜時間は従業員に25%多く給料を支払わなければならない
  • コンビニの商品粗利益(仕入れ値と商品価格の差)は、25%から30%の間である
  • 深夜時間帯の販売にも、本部へのロイヤルティーは発生する

 つまり、深夜時間はもうからない。もしくはマイナスである。

(画像はイメージです)

 併せて、アルバイトだけの勤務にすると不正との戦いが待っている。以前、「敵は“味方”にあり? コンビニ内部不正、終わりなき戦い」という記事を書いた。コンビニで起きる犯罪や事件というと、強盗や万引きなどを想像する人が多いと思うが、実は一番多いのはアルバイトによる商品や現金の持ち出しなのだ。

 深夜の時間帯はお客が少なくてただでさえ売り上げが伸びないのに、人件費は割増。「アルバイトは1人でいい」と思っても、内部不正やコンビニ強盗などの犯罪の温床にもなりかねないので、そういうわけにはいかない。ならば、防犯を考慮して2人雇えば人件費がかかる――。

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