コンビニ本部で社員をして10年余り、いわゆるスーパーバイザーなるものを経験し、何を思ったか、独立オーナーに転身した。自分の仕事についての足跡を残すため、仕事の合間にオルタナティブ・ブログ「とあるコンビニオーナーの経営談議」を執筆中。
現在はオーナーを辞め、コンビニライター&アドバイザーをやっている。
多くの人が一度は利用したことがある「コンビニ」。決して大きなスペースではないが、そこで何が起きているのだろうか。陳列台にはたくさんの商品が並んでいるが、何が売れているのか、またなぜ売れているのか。コンビニの現在と過去を紐解きながら、ちょっとした“謎”に迫っていく。
筆者は大手コンビニの本部社員、元コンビニオーナー。コンビニの表と裏を見てきた者だけにしか書けないコラムはいかがですか?
コンビニで起きる事件というと、一般的には強盗や万引きなどを思い浮かべる人が大半だと思う。ここでちょっと考えてみてほしい。もし、あなたが何か盗むとしたら何を狙うだろうか。
ポテトチップス? いや、これだと大きすぎて目立つ。では、今人気のあるスマホ関連グッズか、それとも高い化粧品か? これらの商品はポケットにたくさん入れるとカチャカチャと音がしてバレてしまう。入ったとしてもせいぜい1つか2つだろう。
こう考えると、盗まれたとしても1日に1000〜2000円程度。ヘンな言い方だが、筆者の経験からして、万引きとして許される許容範囲は1日当たり500円ぐらいだ。ありえない話だが、仮にコンビニでカゴの中に商品を詰め込んで万引きされたとしても、1回の被害で1万円を超えることはまずない。一方、店側もそこまでマヌケではないので、毎日何人もの万引き犯を野放しにすることはない。
では、コンビニで起きる事件で、万引きではない犯罪とは何か。コンビニオーナーとして言えるのは、一番多いのは内部不正、大げさな表現をするなら“業務上横領事件”だろう。
コンビニでは、3カ月に1度、実際の在庫と帳簿上の在庫を照らし合わせる「棚卸(たなおろし)」を行う。業界では、そのときに発覚する損失を「棚卸ロス」と呼ぶ。筆者の経験則だが、3万〜5万円以上の棚卸ロスが発生している店では、内引き(※)などの不正行為が行われていると言っていい。
今回は、コンビニ内部の不正について、実体験を交えてお伝えする。
棚卸ロスが発生する要因は、内引きに限ったことではない。レジでいくつかの同じ商品をまとめて精算する際、商品バーコードをスキャンして個数を入力するオペレーションがある。その時、数字の入力ミスがあった場合は棚卸ロスとなる。
また、納品個数が間違って入荷することもある。ここで検品を怠り、数字が違ったままにしてしまうと棚卸ロスとなる。しかし、欠品データは集計され、あまりにも多い場合には本部経由で業者にチェックが入るので、納品時の欠品は月に数回程度のことである。
誰にでも間違いはある。レジでの入力ミスや納品時の欠品など、棚卸ロスの原因ではあるが故意ではない。では、実際の内部不正はどのように行われているのか。
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