ガンダム、ジェット機、スターウォーズ……南海電鉄「ラピート」の革命杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/6 ページ)

» 2015年11月27日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


ガンダム、Peachエアライン、そしてスター・ウォーズ

 あるときはモビルスーツ(ロボット)の頭部、あるときは航空機、あるときは宇宙の騎士、そんな姿を連想させる電車がある。南海電鉄の50000系だ。関西の鉄道利用者や鉄道ファンにはよく知られた電車だけど、昨年から続いたコラボレーションをきっかけにこの電車を見て、驚いた人も多かったのではないか。

 アニメ「機動戦士ガンダム」のラッピングをするからといって、なぜ電車の先頭車までモビルスーツの頭部にしちゃったのか。

 LCC(格安航空会社)とタイアップするからといって、電車の先頭車まで飛行機にしちゃったのか。

 SF映画「スター・ウォーズ」とタイアップするからといって、電車の先頭車まで悪役の形にしなくてもいいんじゃないの?

 すべて間違いだ。あの電車、南海電鉄50000系は、タイアップのための造形ではない。もともと「あの顔」で走っていた。誕生は1994年。関西国際空港の開業と同時に空港連絡特急「ラピート」として走り始めた。それから21年、6両編成6本の車両が在籍し、毎日、難波と関空を結んで走っているのだ。あの顔で!

南海電鉄50000系電車。ふだんは青い(写真提供:南海電鉄) 南海電鉄50000系電車。ふだんは青い(写真提供:南海電鉄)

 ガンダム版のラピートは、2014年4月26日から6月30日まで運行した。特急ラピートの20周年と、アニメ映画『機動戦士ガンダムUC episode 7「虹の彼方に」』公開を記念したタイアップだった。この企画は南海電鉄側から持ち上がった。南海電鉄広報部によると、「関空特急ラピートの20周年にあたり、もう一度注目してもらおう」と考えた。「いつもブルーだから赤くしちゃうってのはどうかな」、「赤と言ったら赤い彗星のシャアだよね」、「ガンダムとタイアップできたらいいね」となった。私の脚色もあるけれど、だいたいこんなところらしい。

 話を受けたアニメ制作会社としても、ちょうど新作映画の公開時期だったため、話題作りに良いタイミングだったようだ。特急ラピートは国際空港に乗り入れる。世界の入り口に乗り入れる列車である。始発駅の難波は「西日本のポップカルチャー文化の拠点である日本橋」(南海広報部)であり、アニメ、特にガンダムとは親和性が高い。そして、50000系電車を赤く塗ってみたところ、まさしくシャア専用モビルスーツにそっくりになった。運転士さんが青いヘルメットを被ってくれたらモノ・アイ(目玉のように動くカメラ)に見えたのに……って、それはさすがにノリ過ぎか。

赤い彗星の再来 南海特急ラピート ネオ・ジオンバージョン 【Nankai Rapi:t】。ちなみに、機動戦士ガンダムUCにはシャア自身は登場しない。シャアの意思を受け継ぐフル・フロンタルという人物が赤いモビルスーツを操縦する。つまり赤いラピートは「フル・フロンタル機」を模している。動画撮影:ayokoi氏
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