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» 2015年12月15日 08時00分 UPDATE

日本型のインダストリー4.0とは――モノではない、人と人がつながる「IoH」が鍵 (1/2)

先行する欧米の動きに対し、日本はどう立ち向かうべきなのか。恐れているばかりではなく進むべきデジタル化の方向性を見極める時期である。

[鈴木亮平,ITmedia]

 「日本は欧米のスタンスとは違う、日本型のインタストリー4.0が必要だ」

 そう語るのは、日本が進むべきデジタル化の方向性について述べた書籍「日本型インダストリー4.0」の著者、ローランド・ベルガー 日本共同代表 長島聡氏。

 欧州では産官学一体となってインダストリー4.0が進められ、米国では、GEがインダストリアル・インターネットを提唱した。これらの欧米の動きに対し、グローバル競争に後れをとならいために日本はどう立ち向かうべきなのか。長島氏に話を聞いた。

インダストリー4.0のインパクトとは

photo 「日本型インダストリー4.0」

 インダストリー4.0とは一体何なのか。長島氏は、IoTを核とする「つながる」「代替する」「創造する」の3つのコンセプトで説明する。

 「つながる」は、バーチャルとリアルがつながること。これにより、工場全体をバーチャル上に高精度で再現し、そこで性能試験などを行うことができる。開発コストを下げ、品質向上にも役立つ。

 「代替する」は、知能を持つ多機能ロボットや、3Dプリンタなど複雑な作業を代替する取り組みのこと。単純作業の時間が短縮され、人間はより付加価値を生み出すクリエイティブな仕事に特化できるようになるという。

 「創造する」は集めたビッグデータを商品開発などに活用し、新たな価値(製品)を作り出すこと。過去のトレンドのデータなどを分析することで、顧客ニーズを高い精度で予測することができ、投資・開発費用の削減につなげる。

 ドイツが国家プロジェクトとしてインダストリー4.0を進めている背景には、製造業における競争環境が厳しくなっている現状が挙げられる。ものづくりの競争力を高めることを目的に、「工場を起点」として製造業の徹底的なデジタル化を進め、効率化と全体の「見える化」を実現させる。そこから新たな価値を見出そうとしているのだ。

 例えば工場建設の際、バーチャル工場で建設の手順をシミュレーションすることにより、不具合を事前に発見し修復したり、働く人のトレーニングも工場ができあがる前に行うことができる。工場が竣工したらすぐに製造に取り掛かれるのだ。

 一方、米GEのインダストリアル・インターネットは「ビッグデータを起点」とし、新たな顧客価値、ビジネスモデルを創出することを狙いとしている。

 例えば、今までのGEの航空業界におけるサービスは、ジェットエンジンの提供やメンテナンスであった。現在は、ジョットエンジンにセンサーを取り付け、稼働状況や燃費消費などエンジンに関する膨大な情報を集めることを可能にした。それにより、デバイスの販売に加え、燃料の効率的な利用を実現するフライトパターンの提案、エンジントラブルの予測など、ビッグデータを活用したソリューション提供にシフトしたのだ。

日本型インダストリー4.0とは

 これら欧米の動きに対して日本はどう立ち向かうべきか。長島氏は、ドイツの「工場起点」の製造業復権、米国の「テータ起点」のビジネスモデル創出に対して、日本は欧米のスタンスとは違う、日本型のインタストリー4.0が必要だと話す。

 「日本企業のものづくりの生産性は、改善の積み重ねにより欧米企業と比べて高いレベルを維持してきた。もともと効率化が進んでいる日本企業がインダストリー4.0のようなデジタル化を推進しても欧米ほど大幅な効率改善は期待できず、投資に見合った効果は上がらないだろう」(長島氏)

 日本企業がデジタル化によって費用対効果を上げるためには、日本の強みを生かした「顧客起点」での付加価値創出を突き詰めることが必要だという。

 「欧米のように少数の天才がトップダウンで現場の役割を決めるのではなく、現場が主体となって動く日本だからこそ、そして“相手をおもんぱかる”ことを美徳とする文化をもつ日本だからこそ、顧客起点での付加価値創出を武器にできる」(長島氏)

 効率化と同時に、顧客のニーズに対して組織が機動的に動き、きめ細かくサービスを提供していくためのデジタル活用が「日本型インダストリー4.0」だという。

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