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» 2016年03月02日 08時00分 UPDATE

新連載・事例に学ぶ、地方創生最前線:ハリケーンの被害から10年、ニューオリンズはどのようにして「再生」したのか (1/4)

ジャズ発祥の地として名高いニューオーリンズ。米国ルイジアナ州最大の都市に2005年、ハリケーン・カトリーナが襲った。10年が経った今、現地はどのようにして「再生」したのか。

[石川孔明,ITmedia]

プロフィール:

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石川孔明

 1983年愛知県吉良町生まれ。地元愛知県にて漁網のリユースで起業後、外資系コンサルティングファームを経てNPO法人ETIC.へ。社会起業家や起業、行政を対象としたリサーチ&コンサルティングを担当。2011年に世界経済フォーラム・グローバルシェイパーズコミュニティに選出。リクルートワークス研究所客員研究員。

NPO法人ETIC.(エティック)

 1993年設立、2000年にNPO法人化。起業家型リーダーの育成を通した社会・地域づくりに取り組む。東日本大震災後、東北のリーダーを支えるための「右腕プログラム」を立ち上げ、これまでに127のプロジェクトに対して、228名の経営人材を派遣している。2013年度からはジャパン・ソサエティーの支援のもと日米交流プログラムや助成プログラムも実施。


 まもなく東日本震災から5年が経とうとしている。ボランティアの参加人数が最盛期の6%まで落ち込むなど、被災地への関心の希薄化を伝える報道がある一方で、現地ではこれからの日本の地方のあり方を問う革新的な試みが着々と進められている。

 本連載では、自然災害や経済危機を乗り越えながら新しい地域づくりに取り組む世界各地の事例をみながら、地域社会の未来を考えていく。初回となる今回は、2005年に発生したハリケーン・カトリーナの被害からの復興に取り組む米国ニューオーリンズ市の事例を取り上げる。

若手市役所職員、MIT修士課程を経て非営利事業を設立

 ジャズ発祥の地として名高いニューオーリンズ市は、米国ルイジアナ州最大の都市である。ミシシッピ川河口域の港湾都市として栄え、人口は市域で約36万人、都市圏では100万人を超える。この地を直撃したカトリーナは、周辺市街地の8割を水没させ、1000人以上の命を奪った。その被害は大きく、10年が経過した今も更地のままとなっている住宅地も散見される。

 いま当地で注目されているのが、地域の非営利団体ブロード・コミュニティ・コネクションズ(BCC)が牽引する「リフレッシュ・プロジェクト」だ。ニューオーリンズ市内の健康格差の解消を目指すこのプロジェクトを立ち上げたのは、当時26歳であったジェフリー・シュワルツだった。

yd_ochi1.jpg 爽やかな語り口が印象的なジェフリー。インタビュー中も通りがかった近所の人たちと明るくあいさつを交わしていた(筆者撮影)

 ニューオーリンズ出身のジェフリーは、他州の大学を卒業して同市の市役所に就職。いわゆるUターンである。数年後に、カトリーナの被害が発生した。市役所職員として災害復旧業務に携わるなかで、「もっと深くまちづくりに関わりたい」と感じ、MIT(マサチューセッツ工科大学)の修士課程に入り、都市計画を学んだ。

 当初はMITを修了し、ニューオーリンズ市に再就職しようと考えていたが、「行政に入るよりも、民間の立場でまちづくりに関わりたい」と2009年に独立、非営利団体ブロード・コミュニティ・コネクションズを立ち上げた。団体のミッションはニューオーリンズ市内の主要道路のひとつ、ブロード・ストリート周辺のまちづくり。職員は彼一人、手始めにストリートの看板作成支援や、アート・プロジェクトなどを実施した。

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