実際に今から2年前、米ヤフーのCEOが実際に取得していなかったコンピュータ・サイエンスの学位を取ったと詐称していたことが判明してクビになった。大手健康食品会社ハーバライフの社長もMBAを取得しているとふれまわっていたが真っ赤なウソだった。「実力社会」なんていわれる米国にしてもライバルとの熾烈(しれつ)な競争で頭ひとつ飛び出るため、「学歴」や「経歴」というブランドに頼ることがある。そのため、川上さんのような「ブランディング」に走る者も少なくないのだ。彼らは単純に「成功したい」というエゴを満たすため嘘をつく。世間が求めたとか、ラベル云々など一切関係ない。
また、川上さんに経歴以上の実力があったとか、人柄が良いとかいう議論も無意味だ。基本的に経歴詐称をしてまで成功を手にしたような人というのは、「実力があって人柄もいい」と相場が決まっているからだ。
「経歴詐称」というのは、「実力ゼロ、人柄最悪」みたいな人間がおこなうことは少ない。世界的にみても、ある程度のキャリアや実力をもちながらも、そのポジションに満足できない者が手を出してしまう、「ドーピング」のようなものなのだ。
それは、お隣の韓国をみると分かりやすい。ご存じの方も多いかもしれないが、かの国は猛烈な学歴社会ということもあって、川上さんのようなインチキをする人がゴロゴロいる。
それが一気に露呈したのが2007年。「美術界のシンデレラ」なんて呼ばれていた大学教授の経歴詐称が明らかになったのをきっかけに、映画監督、女優、ラジオの人気司会者、さらには信者25万人を擁する僧侶などの経歴詐称も世に出たのだが、そこで注目すべきは、彼らのほとんどが、川上さん同様に「実力があって人柄もいい」という人だったという点だ。
例えば、人気英語講師だったイ・ジヨンさんなど川上さんと丸かぶりだ。
誰も認める語学力で、人気講師として多くの人々に英語を教えるかたわら、FMラジオ番組『グッドモーニング・ポップス」の司会を務めていたジヨンさんのプロフィールは、中学生の時に渡英し、ブライトン大学を卒業、1996年に言語学の修士課程を修了したというものだった。
しかし、現実は渡英した後、ランゲージスクールで1年間勉強し、ブライトン市の技術専門学校に1年間通ったというものだった。語学に関してはしっかりとした実力があるにもかかわらず、「講師ビジネス」の箔(はく)を付けるためついつい経歴を盛ってしまったのだ。
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