飛行機に“最後に乗る”のはどんな人か 羽田空港を分析水曜インタビュー劇場(1分1秒公演)(1/6 ページ)

» 2016年05月11日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

水曜インタビュー劇場(1分1秒公演):

 「飛行機=遅れる」といったイメージを抱いている人も多いのでは。しかし、である。米国のとある企業が発表した「定時到着率ランキング」(※)をみると、JALがトップ。定時到着率とは「遅延15分未満に到着した比率」のことで、トップのJALは89.4%。見方を変えると、定時に到着していない便は、運航全体の1割ほどしかないのだ。イメージというものは怖い。

※米国のFlightStats社が毎年「定時到着率ランキング」を発表している。メジャーインターナショナル部門では世界の大手航空会社36社、アジア・太平洋メジャーエアライン部門では31社が対象となっている。

 定時到着率をアップさせるために、JALはどんなことをしているのか。取材を進めていくと、遅延発生の原因を分析していることが明らかに。それだけではない。季節ごとにどのような傾向があるのか、路線ごとに違いはあるのか、などさまざまなパターンを調査していたのだ。

 そこで、気になるのが分析結果である。飛行機を定時運航させるために、さまざまな角度から分析をしている矢嵜敬太さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンライン編集部の土肥義則。

 →なぜJALの飛行機は“遅れにくい”のか 定時到着率1位の裏側(前編)

 →後編、本記事


問題がある503便

土肥: 矢嵜さんは飛行機に遅れが生じないために、さまざまな角度から分析されていますよね。例えば、羽田発―那覇着の901便が頻繁に遅れるので、原因がどこにあるのかを分析して、その問題に対応。結果、定時出発率をアップさせた。前回はそんな話を中心に聞かせていただきましたが、このほかにも“問題のある便”はあるのでしょうか?

矢嵜: 残念ながら、あるんですよ。昨年の6月29日から9月29日まで一度も定時に出発することができなかった便が……。それは朝の7時30分に羽田空港から出発して、新千歳(札幌)空港に到着する503便!

土肥: き、気のせいかな……矢嵜さんの語気が強くなったような。

矢嵜: 夏休みの忙しい時期だったこともあってなかなか手をつけることができなかったのですが、「このままではいけない。なんとかしなければいけない」ということで、どこに問題があるのかを分析しました。

 羽田発―新千歳着は6時30分から20時30分までの間、1時間に1本飛んでいるんですよね。その中で、503便は予約率が最も高いんですよ。「なぜ予約率が高いのかなあ」と思って、どんな人たちが乗られているのか、どんなチケットを購入されているのかを調べました。

 結果、ビジネスパーソンが少ないことが分かってきました。ではどんな人たちがどんなチケットで乗られているのかというと、高齢者の方と学生の方がインターネットを使って安いチケットを購入されているケースが多いことが明らかに。定年前に夫婦で札幌を楽しもうという高齢者の方、雪が積もっている札幌でスキーを楽しもうという学生の方が多いのではないでしょうか。

 503便はボーイング777という大型機に、毎日500人ほどが乗っています。というわけで、たくさんの人が6時ごろになると空港に来られるんですよね。出発1時間前の6時30分ごろに、チェックインカウンターが混み始める。手続きが終われば、そのまま保安検査場に流れる。7時前くらいから、保安検査場に長い行列ができるんですよね。そして、7時30分に出発しなければいけないのですが、2〜3人来られない……というケースがものすごく多いんです。いなければ探さなければいけません。そうすると、数分遅れてしまうんですよね。

ボーイング777-300
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