大薗: マッチングサービスという点では、例えば、看護師やITエンジニアといったスキルやスペックが明確なほうがやりやすいと思うのですが、なぜ結婚というハードルが高そうな分野に参入したのでしょうか?
石坂: スキルを軸にしたマッチングサービスは既に多くの事業者が参入しています。それに対して、出会いや結婚という混沌とした分野だと参入も少なく、そこできちんとしたサービスをやることの方が価値を出せると思いました。ただ、独立するときに「なぜ出会い系なんてやるのか?」などと親や友人から小言を言われましたが(笑)。
もう1つの理由があるとすれば、例えば、先ほどお話しした不動産や人材のようなビジネスは相場に左右されるというのがすごく気になっていました。僕らはバブル世代以降の人間で、就職氷河期を経験してきたので、どんなに自分たちが努力しても、相場や環境に振り回されるというのは今後もあるだろうと痛感しています。ただし、結婚やパートナー探しのような人間の根源的欲求は、あまり関係ないだろうという確信がありました。
大薗: きちんとしたサービスを作るという言葉が繰り返しありました。こうすれば質の違いを出せるとか、顧客との信頼を構築できるとか、既存の出会い系サービスとは明確に異なるものにできるという見通しはあったのですか?
石坂: はい。ほかの出会い系サービスは基本的に匿名で、利用者にとっては会員管理などもいっさいしてほしくないというものでした。あくまで出会いの場だけを提供していたのです。場を提供するメリットはお互いにあるのでしょうが、それでは差別化できません。
そこで僕らのサービスは会員登録時に本人確認証明書を必須としたり、利用者からの問い合わせに対して誠心誠意、素早く回答したりするようにして、信頼関係を築けるように努めました。実はこれって普通のビジネスでは大したことではないのですが、この業界ではそれをすることで競合と比べて相対的に優位に立てるという確信はありました。
よく銀行は信頼があると言われますが、世の中には信頼性が高い銀行もあれば、いまいちな銀行もあります。広義では出会い系業界はいい加減だけど、その中で誰もやらないようなことを徹底して行えば、信頼は得られるはずだと思っていました。
大薗: では、具体的にどのようにサービスの質を高めているのでしょうか?
石坂: 僕らのサービスのKPIは成婚率です。優秀な結婚カウンセラーを育てて、会員を手厚くサポートし、この数字をいかに高めていくかに注力しています。
一般的な結婚までのプロセスを見てみましょう。出会いの機会がない、交際できない、結婚できない、の大きく3段階に分けられます。それを僕らは段階的にサポートしています。具体的には、お見合いの機会作りや、相手に恋愛感情を持たせるようなサポート、さらには交際、結婚を判断する場面で背中を押してあげるサポートなどです。特に恋愛と交際はできても、いざ結婚というと判断を遅らせてしまう男女は結構いるものです。
まず会員になると、オリエンテーションでカウンセラーと必ず半年間ないし1年間の目標設定をします。例えば、誕生日やクリスマスまでに結婚するなど、明確な目標を立てます。そうしないと結婚に向けた具体的なアクションの話にならないからです。
多くの会員は1年前後で結婚するという実績があり、それまでに10〜15人くらいの方とお会いします。ひと月に1〜2人と会う計算です。このペースメイキングが大切だと思っています。毎月1〜2人と納得感あるお見合いを継続して、半年から1年で1人に絞り、そこから1〜3カ月お付き合いして結婚されます。
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