あなた「らしさ」とは? このように聞かれてどう答えますか「売れる商品」の原動力(3/4 ページ)

» 2016年08月15日 05時30分 公開
[井尻雄久ITmedia]

モチベーションに直結する「独自性」の発見

 強いチームで勝ち抜いているアスリートたちからは、しばしば「このチームで戦えることを誇りに思う」「このチームの一員として試合に臨めることを誇りに思う」という言葉が発せられます。

 そこには所属するチームに対する「誇り」と「愛着」がにじみ出ています。強いチームには、この選手個々が抱く「誇り」と「愛着」があるのです。それは結果を出すチームに“不可欠”な要素と言ってもいいでしょう。なぜなら、「誇り」と「愛着」こそが、選手たちのモチベーションそのものだからです。

 かつて広告会社に勤務していた時に、私が関わらせていただいた仕事の1つに三菱鉛筆のお仕事がありました。明治20年(1887年)創業の、日本の筆記文具の老舗です。

 同社のロングセラー商品に「POSCA(ポスカ)」という水性顔料インクのマーカーがあります。1983年の発売ですから、誰もが目にしたことがあるでしょう。どんな素材にでもポスターカラーのビビッドな色が載り、しかも重ね書きできるという特性で人気となり、販売促進用のPOPなどには欠かせないツールとして定着しました。

 とくに、細書きタイプの登場でプリクラに文字や絵を書きこむ女子中高生たちの間では定番アイテムとなり、また欧州などでもアーティストに注目されるなど、国内外でその認知は不動のものとなりました。

 ただ、IT時代の進展と共に筆記具の需要に陰りが生じたことに加え、家庭での日常的な利用では使われる場面が今一つ広がらず、発売30周年の2013年を前に、売り上げは横ばいになっていました。

 そこでご相談いただいたのは、この「POSCA」の売り上げを再び伸ばしていくにはどうしたらいいかというものでした。同社にとってはすでにロングセラーの商品であり、それこそ若い社員にすれば生まれる前から存在していた商材です。そこにあって当たり前で、逆に言えば今さら特別に何かをアピールできるアイテムではなかったのかもしれません。

 まずは三菱鉛筆の社員の方々に、この「POSCA」を家に持ち帰って使っていただきました。あるいは友達にワンセットさしあげたりして、何でもいいので「POSCA」を使った作品を持ち寄るという“宿題”を作ったのです。

「POSCA」の売り上げを再び伸ばすには……?(出典:三菱鉛筆)

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