今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。
欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。
現在、世界的にハッキング事件が頻発している。
9月13日、世界反ドーピング機関(WADA)が、ロシアのハッカー集団によるハッキング被害に遭い、五輪選手などの医学的情報が盗まれた。日本の柔道女子57キロ級の松本薫選手をはじめ、テニスの米国人ウィリアムズ姉妹やスペイン人ラファエル・ナダルなどの情報もインターネット上に公表された(参照リンク)。
さらに9月21日には、タックスヘイブン(租税回避地)として知られるカリブ海のバハマで設立された17万5000社ほどの企業情報ファイル130万点が何者かによってリークされたことが判明。その「バハマリークス」と呼ばれるファイルの中身が報じられて話題になった。ハッキングの可能性も指摘されており、ハッキングでタックスヘイブン関連の書類が盗まれて暴露された「パナマ文書」に次ぐスキャンダルになりそうだと、日本でも報じられた。
9月22日には、米インターネット大手ヤフーが2014年に国家的なサイバー攻撃に遭い、少なくとも5億人分の顧客情報がハッキングで盗まれたと発表している。
これら以外にも、8月半ばには、米NSA(国家安全保障局)の「サイバー兵器(ツール)」がNSAの関連組織からミスで盗まれているし、米大統領選でもロシアのハッカーが米民主党を襲い、幹部らのやり取りを含む電子メールを盗んでいる。
とにかく枚挙に暇がない。
以前、この連載でも、国家などが主導するハッキングというサイバー攻撃(WADAや米民主党のケースはロシア政府の関与が指摘されている)によって、他国の政治家などの情報を盗んで暴露することで、内政を操作することもできてしまう危険性があると指摘した(関連記事)。
だがハッキングがますます横行する今、それとはまた別の懸念が、欧米のサイバーセキュリティ専門家らの間でいくつか取りざたされている。
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