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» 2016年10月21日 06時30分 UPDATE

杉山淳一の「週刊鉄道経済」:世界に通じる観光列車へ! 「木次線ワイン&チーズトレイン」から始まる未来 (1/5)

JR西日本が三江線の廃止を決定した。「明日は我が身」と近隣の木次線沿線は危機感を抱く。木次線開業100周年実行委員会が行事を準備する一方、新たなプロジェクトが始まった。お客さんも、鉄道会社も、地域の人々も笑顔にする。「木次線があって良かった」と世界の人々に喜んでもらうため、新しい観光列車へ向けた取り組みだ。

[杉山淳一,ITmedia]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


 列車の中でおいしい食事をとったり、お酒を飲んだりしながら旅をするのは格別である。その楽しさに共感する人は多いのではないだろうか。それを実現する新たなツアーが登場した。

 日本旅行は10月14日、日帰りツアー企画「木次線ワイン&チーズトレイン」を発売した。設定日は11月6日と20日の日曜日だ。木次線(島根県〜広島県)のトロッコ列車「奥出雲おろち号」を利用する“呑み鉄”ツアーである。

奥出雲おろち号の車内。紅白のワインで“呑み鉄”するツアー 奥出雲おろち号の車内。紅白のワインで“呑み鉄”するツアー

 主な目的はワインとチーズ、そしてワイナリーのゲストハウスでの食事だ。鉄道趣味とは縁遠い内容で、出雲市駅を出発し、木次駅で降りてしまうから、木次線の特長となるスイッチバックは体験できない。作家・松本清張の小説『砂の器』に登場し、駅舎の蕎麦屋でも知られる亀嵩駅も行かない。しかし、これは、鉄道ファンにとって味わい深いローカル線、木次線を救うためのツアーである。

 6日の行程をたどってみよう。まず車内で奥出雲葡萄園の赤白のグラスワインが提供される。車窓に流れゆく里山の風景を楽しみつつワインを楽しむ。ワインに合うおつまみと言えばチーズ。木次駅からは貸し切りバスでの移動となり、木次乳業でモッツァレラチーズ作りを体験する。木次乳業は日本で初めてパスチャライズ(低温殺菌)のおいしい牛乳を作った会社だ。

 次に奥出雲葡萄園を見学。美しい丘陵にある小さなワイナリーだ。ここには景色の良いゲストハウスがあり、そこで昼食を取る。4種類のワインが提供されるという。地ワインを巡る人にとって、希少な銘柄に価値を見いだせるだろう。

奥出雲葡萄園のレストランのランチ 奥出雲葡萄園のレストランのランチ

 ワインの次は日本酒だ。奥出雲は日本酒とのかかわりが古い。ヤマタノオロチを酒に酔わせて退治するという伝説があるが、これが日本の神話に登場した最初の酒だという。そこで地元の酒蔵、木次酒造を見学する。もちろん試飲できる。その後、木次駅に戻り解散となる。

 出発駅に戻らない行程は、日本旅行の鉄道ツアーらしいところだ。このまま15時03分発の宍道行きで帰ってもよし。ここから先は独自の旅を続けても良し。温泉旅館や国民宿舎もある。翌日のおろち号でスイッチバックを体験したり、「たたら製鉄の里」を訪ねたりしても良さそうだ。なお、20日は訪問先の順序が変わる。内容は同じだ。

 この行程からも分かるように、木次線ワイン&チーズトレインは、今までの奥出雲おろち号にはなかった、新しい客層を獲得するための企画だ。亀嵩もスイッチバックも今回はなし。それはこれまで同様、奥出雲おろち号や普通列車で楽しめる。

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