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» 2016年11月07日 06時30分 UPDATE

池田直渡「週刊モータージャーナル」:日産ノート e-POWERの狙いはリーフの緊急救援 (1/3)

日産自動車が小型車「ノート」にe-POWERを搭載した新モデルを発売した。いわばガソリン発電機を積んだ電気自動車である。このクルマが登場した背景には、電気自動車「リーフ」の穴埋め的意味合いがあるという。

[池田直渡,ITmedia]

 11月2日、日産自動車は新しいエコカーの推進システムとして、「ノート」にe-POWERを搭載した。一言で言えば、エンジンを発電機としてのみ使い、駆動力としては100%モーターを使うシステムだ。ガソリン発電機を積んだ電気自動車だと言える。

ノートの追加車種として生まれた発電専用エンジン搭載の電気自動車「e-POWER」 ノートの追加車種として生まれた発電専用エンジン搭載の電気自動車「e-POWER」

 日産は従来から電気自動車「リーフ」を主役にエコカー戦線を戦ってきたが、残念ながら正直なところリーフの見通しは厳しい。リーフがデビューしたのは2010年12月。ところが発売からわずか3カ月後に東日本大震災が起き、わが国の電力インフラ事情が大きく変わってしまった。

停滞したスマートグリッド構想

 リーフはいわゆるスマートグリッド構想を前提としたクルマである。原子力発電は一度炉を稼働してしまえば、出力の大幅な調整が難しく、常時一定の発電をしてしまう。電力需要は昼間と夜間では差が大きく、昼間の電力ニーズに合わせて発電量を決めれば、夜間に電力が余る。そのために調整の難しい原発以外に、発電能力がコントロール可能な火力の一部や水力などをブレンドして夜間の発電量を調整できる体制がとられたのだが、これだけでは十分ではなかった。

 例えば、水力発電所では、原発による夜間の余剰電力を使って揚水し、日中のピーク需要に備えるのだが、これにも限界がある。どうやっても余って仕方がない夜間の余剰電力を何らかの方法でプールして、必要なときに引き出すことができれば、電力のアイドルタイムを解消して全体効率を引き上げることができる。

リーフはスマートグリッド構想の重要な一角を担う予定だった リーフはスマートグリッド構想の重要な一角を担う予定だった

 そこで自動車に大型バッテリーを搭載して、夜間にインフラ電力から安価に電力を供給し、バッテリーにプールする方法が模索された。電力を溜めることさえできれば、家庭の日中の電力源として使ったり、売電によって地域内の電力需要に回したりと活用方法はいくらでもある。わが国では、平日は自宅駐車場に停まったままのクルマが多いので、それらのクルマに電力インフラの一部を担ってもらおうという考え方だ。

 このスマートグリッド構想には、電気自動車が最適なのは言うまでもない。しかも劣化して使えなくなったバッテリーは、電力会社が買い取って電力プール用のバッテリーとして活用するという構想まででき上がっていた。電気自動車はバッテリーの劣化が始まると航続距離がてきめんに短くなってしまう。しかし、クルマの動力源として使うのには厳しい弱ったバッテリーでも、電力プール用ならまだまだ十分に使えるからだ。つまり電気自動車のバッテリーがインフラとして役立つだけでなく、使用済みバッテリーまでプール用に使えるという妙手だったのである。

 こうした先進的なスマートグリッド構想の下にスタートしたリーフだったが、震災以降、原子力発電所の再稼働は政治的ハードルが高く、遅々として進んでいない。その結果、当初の予定にあった夜間電力の余剰が目論見より大分減ってしまっているのだ。

 日産は、夜間電力の安価な利用という最大のセールスポイントを失い、それでもリーフの魅力を高めるべく、バッテリー容量の増加などの手を打ってきたが、このままではいつ再稼働するか全く分からない原発と心中になりかねない。スマートグリッド頼りで戦略を引っ張るにも限度があるのだ。

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