「なにわ筋線」の開通で特急「ラピート」と「はるか」が統合される?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)

» 2016年11月11日 07時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]

北梅田駅に接続するなにわ筋線を協議中

 なにわ筋線の構想の歴史は古く、1982年に大阪市と大阪府が計画した。新大阪と難波、さらに南海電鉄の岸里玉出を結ぶ路線だ。この構想は国土交通省に認められ、2004年に近畿地方交通審議会「答申第8号」に盛り込まれた。ルートは少し変わり、新大阪〜北梅田〜玉江橋〜堀江〜JR難波駅と堀江から分岐して南海電鉄汐見橋駅に至る、となった。

 JR難波駅は関西本線の駅で、大阪環状線の今宮駅から内側に入ったところにある。大阪環状線と関西本線は直通可能な構造だ。JR難波駅に接続すれば、天王寺駅から関西本線の奈良方面、または阪和線で関空、さらには和歌山、紀勢本線へ直通できる。JR西日本はなにわ筋線の実現に期待しており、1996年に今宮駅〜JR難波駅を地下化。将来のなにわ筋線との直通に対応させた。

なにわ筋線とその周辺略図。黒がJR西日本、緑がなにわ筋線、赤が梅田貨物線、青が南海電鉄 なにわ筋線とその周辺略図。黒がJR西日本、緑がなにわ筋線、赤が梅田貨物線、青が南海電鉄

 南海電鉄の汐見橋駅は南海電鉄高野線の起点である。しかし、高野線は現在、岸里玉出から南海本線に並行して難波に至る運行系統となっている。汐見橋駅〜岸里玉出駅は支線扱いで、「汐見橋線」という通称もでき、都会のローカル線という状況だ。南海電鉄は汐見橋線の活性化を見込んで、なにわ筋線に期待を寄せていた。JR西日本と同じく汐見橋線を地下化する構想もあった。

 その後、なにわ筋線は関空アクセス路線として注目される。橋下徹知事時代の「大阪都構想」でも盛り込まれた。そこでルートや採算性を再検証したところ、汐見橋線接続案は採算面で難があり、南海電鉄も難波に地下新駅を作ってなにわ筋線接続させる案で合意した。また、新大阪〜北梅田に関しては、新路線の建設ではなく、梅田貨物線旅客化ルートを活用する。

 ルートの概要は決まった。運行事業者はJR西日本と南海電鉄だ。しかし、それ以外はなにも決定していない。具体的にどの土地を通るか、事業費負担の割合をどう配分するか。建設主体はJR西日本か、南海電鉄か、あるいは第三セクターが建設して上下分離化か。また、JR西日本と南海電鉄がどこまで乗り入れるかも未定だ。しかし、仮称北梅田駅は工事が始まっている。なにわ筋線と梅田貨物線の接続方法についても決めなくてはいけない。

 なにわ筋線の協議に関する報道は、JR西日本の梅田貨物線地下化工事に刺激される形で活発になったと考えられる。JR西日本と南海の共同運行、南海電鉄がなにわ筋線にとどまらず、梅田貨物線へ直通して新大阪へ乗り入れる可能性もあり、これが協議の争点となっているようだ。JR西日本が早期実現のため、南海の乗り入れを認める提案をしているという。最近の報道も、南海電鉄の新大阪駅乗り入れ構想を主にしている。

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