「なにわ筋線」の開通で特急「ラピート」と「はるか」が統合される?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/4 ページ)

» 2016年11月11日 07時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


 2016年10月末ごろから、大阪駅周辺の鉄道計画について報道が賑(にぎ)やかだ。

 10月27日にJR西日本が「東海道線支線地下化工事」を報道公開した。ほぼ同時期に、この地下路線に接続し、大阪を南北に貫く「なにわ筋線」の進ちょく情報も伝わってきた。2つの路線を経由すると、京都、新大阪、大阪(北梅田)と関西国際空港を接続するルートが完成する。なにわ筋線はJR西日本と南海電鉄が乗り入れる前提となっており、両社と大阪府、大阪市を交えた4者協議が続いている。

大阪都市圏の東側に新たな広域鉄道ネットワークができる

 東海道線支線地下化工事は、大阪駅の北側にあった梅田貨物駅を廃止し、空いた空間を再開発する計画に伴う工事だ。広大な梅田貨物駅の機能は吹田貨物ターミナルに移転した。ただし、梅田貨物駅を通る東海道本線貨物支線、通称「梅田貨物線」は廃止とならなかった。東海道本線から桜島線の安治川口駅まで直通する貨物列車があるからだ。その中には佐川急便がチャーターする貨物電車「スーパーレールカーゴ」も含まれる。

JR西日本の関空アクセス特急「はるか」 JR西日本の関空アクセス特急「はるか」

 梅田貨物線は、吹田貨物ターミナルと大阪環状線の西九条駅を結ぶ線路だ。このうち新大阪駅〜西九条駅間は旅客列車も走る。新大阪駅から梅田貨物線を間借りし、大阪環状線経由で天王寺、さらに阪和線に入るルートになっている。現在、関空アクセス特急「はるか」30往復と、阪和線からさらに紀勢本線に入る特急「くろしお」15往復が走っている。

 梅田貨物線は、いまや特急列車にとって重要なルートになった。そこで、梅田貨物駅の移転後も梅田貨物線を残し、地上を再開発するために地下へ移設する。そのとき、線路を大阪駅寄りに変更し、ついでに大阪駅に近い場所に旅客駅を新設する。今まで「はるか」と「くろしお」は大阪駅に停車できなかった。そこで、大阪駅に隣接する新駅に停めようというわけだ。大阪駅エリアから関空、紀伊半島へ直行できる。この新駅が仮称北梅田駅で、開業は2023年の予定だ。

東海道線支線地下化・新駅設置計画。青い点線が移設地下化区間(出典:JR西日本) 東海道線支線地下化・新駅設置計画。青い点線が移設地下化区間(出典:JR西日本

 仮称北梅田駅の開業によって、今までは貨物線を間借りするように走っていた特急列車が停車する。つまり、梅田貨物線は正式に旅客線となる。また、梅田貨物線の新大阪駅〜吹田貨物ターミナル間も旅客線化工事が行われていて、こちらは「おおさか東線」の延伸区間となる。新大阪駅〜仮称北梅田駅もおおさか東線に組み込まれる。実現すると、おおさか東線沿線と大阪駅エリアが直結し、新たな環状ネットワークが完成する。

仮称北梅田駅は、おおさか東線の延長にあたる。大阪環状線西側を巻き込んで環状線の一部となる(出典:JR西日本) 仮称北梅田駅は、おおさか東線の延長にあたる。大阪環状線西側を巻き込んで環状線の一部となる(出典:JR西日本
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