10速オートマの登場、まだまだ消えないMT車池田直渡「週刊モータージャーナル」2016総集編(2/4 ページ)

» 2016年12月30日 07時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

一周して最先端、オートマにはないMT車の“超”可能性

 マニュアルトランスミッション(MT)は消え去るかもしれないという空気が消えつつある。一昔前と違って、ここ数年MTを搭載したというクルマが少しずつではあるが増えている。やはり駆動力制御のダイレクト感や、意図していない操作は決して行われないということがMTの大きな利点である。

風前の灯火かと思われたMTに復権の兆し。写真はスズキ・アルト・ワークスのシフトノブ 風前の灯火かと思われたMTに復権の兆し。写真はスズキ・アルト・ワークスのシフトノブ

 といった普遍的なMTの価値と違う、超可能性を唱え始めたのはマツダである。マツダは高齢化社会に対してMTがボケ防止につながるというテーマで、何と東京大学に投資して講座を設けて真剣に研究している。基本となるのは米国の心理学者、ミハイ・チクセントミハイが提唱する「フロー体験」である。ゲームを想像してもらうと分かりやすいが、簡単過ぎるゲームはすぐに飽きてしまうし、あまりに難しいゲームは戦意を喪失してしまう。ちょうど良い挑戦的な状態は人を活性化させる。日本で古来から言う「没我の境地」のようなもの。それをチクセントミハイはフロー体験と言うわけだ。

 マツダは「MTをうまく運転しよう」ということは、このフロー体験になるのではないかと考えた。ただしである。自動車の運転は公共の安全を考えても、そう簡単にチャレンジングなことをしてもらっては困る。実際、高齢者の事故が大きな問題となっているご時世でもある。

 そこで、マツダは自動運転の技術を使って、エラーを回避するシステムを作り上げようと考えた。あたかもシークレットサービスのようにドライバーの影に潜み、いざというとき、ドライバーに代わって危機を回避するというのである。自動運転と言うと人が何もしないことを考えがちだが、人こそが主役で、システムはそのサポートをするという考え方も成立する。そう考えると、目的は安楽ではないので、MTの自動運転という考え方も成立するのである。そういう技術がいつできるのかという質問にマツダは「10年ではかかり過ぎ」だと答えていたので、遠からず何らかの技術が出てくるだろう。

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