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» 2017年02月09日 06時30分 UPDATE

延伸プロジェクトの裏側:北陸新幹線で見せたJR東日本のチャレンジ (1/2)

2015年3月に金沢駅まで延伸開業した北陸新幹線。実は開業にあたり、運営会社のJR東日本にとって運行管理の観点でさまざまな挑戦があったという。

[伏見学,ITmedia]

 北陸新幹線の金沢駅への延伸開業から間もなく2年。利用者数は堅調に推移しており、沿線地域にもさまざまなメリットをもたらしている。日本政策投資銀行の発表によると、開業後1年間で石川県に与えた経済波及効果は約678億円で、想定の5倍を超えたという。

北陸新幹線はJR東日本とJR西日本が共同運行する(写真提供:JR東日本) 北陸新幹線はJR東日本とJR西日本が共同運行する(写真提供:JR東日本)

 現在、北陸新幹線を運営するのは、東日本旅客鉄道(JR東日本)と西日本旅客鉄道(JR西日本)。東京〜上越妙高区間がJR東日本、上越妙高〜金沢区間をJR西日本が受け持つ。JR東日本にとって、他社との共同運行は在来線では経験があったものの、新幹線については初めて他社と共同運行しているのである。

 JR東日本の新幹線は、東京を中心に5方面へ路線を伸ばし、多種多様な高速高密度運行を行っていることから、異なる取り組みを進める必要があった。その最大のポイントが運行管理システムの共同化だ。JR東日本で導入している運行管理システム「COSMOS」をベースに、両社が共同利用できる新たなシステムを構築したのである。

 COSMOSとは、Computerized Safety, Maintenance and Operation Systems of Shinkansenの略で、JR東日本が運営する新幹線の輸送計画から運行管理、旅客案内、車両管理、保守作業管理などに至るまで、新幹線の安全・安定輸送を支えるトータルシステムである。なお、東海道・山陽新幹線では「COMTRAC」、九州新幹線では「SIRIUS」、北海道新幹線では「CYGNUS」という運行管理システムが使われており、日立製作所が開発に携わっている。

 共同システムを構築する上で、大きく3つの工夫がなされた。1つ目はオペレーションに関する部分だ。上述したように、上越妙高駅を境界として運営会社が切り替わる。そこでまずは両社それぞれの営業区間のダイヤを作成した。なぜ別々に作成する必要があるかというと、在来線への効率的な接続、停車駅や運転本数など個別の事情があるためである。でき上がった両社のダイヤを合成し、境界駅での時刻や使用するホーム番線などの各種情報が合致しているかどうかをシステムでチェックし、エラーが出た項目を修正して、両社のダイヤを完成させた。

 例えば、台風や大雪などの影響で列車が遅れ、急遽ダイヤの変更が必要になった場合は、両社の指令所間ですぐに通知するとともに、システムに変更情報が反映されるオペレーションにした。この変更情報は指令所のメインシステムを通じて、駅や車両基地にあるサブシステムへ、さらにそこから運転士と車掌、車両や設備のメンテナンス担当者、車内販売や清掃のスタッフなどに伝わる仕組みになっている。

JR東日本の新幹線路線マップ JR東日本の新幹線路線マップ(出典:JR東日本)

 2つ目が稼働中のCOSMOSへの統合だ。今回の取り組みは、既存システムに240キロメートル(長野〜金沢)の新たな線区を追加した形となるが、その際、動いているCOSMOSを止めることなく新しい機能を埋め込むことが大きなチャレンジだった。

 例えば、企業の業務システムを考えた場合、夜間などに本番システムを止めて作業することが可能だが、COSMOSは基本的に24時間、365日稼働し続けているので、止めるという選択肢はあり得なかった。「鉄道が運行している朝〜夜はもちろんのこと、夜間はCOSMOSを使って車両のメンテナンス作業などを行っているため、決して止めてはならないシステムなのです」とJR東日本 鉄道事業本部 電気ネットワーク部 課長で、COSMOS技術管理・開発プロジェクトのグループリーダーを務める恩田義行氏は話す。

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