地味な技術で大化けしたCX-5池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

» 2017年02月20日 07時22分 公開
[池田直渡ITmedia]

 ロードスターの発売で第6世代商品ラインアップを完成させたマツダは、その第6世代のトップバッターであったCX-5をフルモデルチェンジした。「すわ第7世代の登場か!」と勢い込んだが、そうではないらしい。マツダの人はこれを6.5世代だと意味あり気に言うのだ。

 勿体(もったい)ぶらずに教えてもらいたいと思っても、まだまだ先の第7世代戦略を教えてもらえるわけはない。だが第7世代の構想は、マツダ自身の言う第6.5世代の向こう側にきっとおぼろげながらに見えるに違いない。きっと第7世代が出てきてから「ああ、あれがヒントだったのか」と初めて得心がいくのだろうが。

フルモデルチェンジを果たしたマツダCX-5。マツダのグローバル販売台数の4分の1以上を占める大ヒットモデルの後を継ぐ。価格は246万2400円から フルモデルチェンジを果たしたマツダCX-5。マツダのグローバル販売台数の4分の1以上を占める大ヒットモデルの後を継ぐ。価格は246万2400円から

往年のベンツみたいだ!

 さて最初に書いてしまおう。新型CX-5に正直びっくりした。舗装の良い一般道を真っ直ぐ走っているとき、「何だ、これは。往年のベンツみたいじゃないか!」と思ったのだ。まだ国産車が欧州車に及ばなかった時代のW124型Eクラスのドライブ感覚がそこにはあったのだ。どこで読んだのかはもう思い出せないが「グリスを塗ったベアリングを定盤の上で転がすよう」とまで賞賛された高精度な直進性がかつてのベンツにはあり、それを彷彿とさせるような走りがCX-5にはあった。

 と、クライマックスシーンを先にお届けしてから、時計の針を巻き戻そう。試乗では新旧のCX-5を比較した。当然だが、まずは旧型だ。ご存じの方も多いだろうが、旧型、つまり初代CX-5は出来の良いクルマだ。久しぶりに運転して思い出した。適度なのどかさと、スポーティーさが不思議に同居し、キビキビも走れるのに、ゆったり走れるリズムもある。適度にがっちり感があるソフトマッチョで、頼もしさもある。

 全体を通して言えるのは、全てに余裕がある。CX-3と比べると、この余裕の有無で生じる満足感や安心感は天と地ほど違う。くれぐれもCX-5に試乗して「もう少し小さい方が……」という文脈でCX-3をチョイスすることのないように注意しておきたい。CX-3の挑戦的な姿勢は買うが、現時点でクルマの出来そのものはお勧めできない。懐具合にとやかくは言えないが、もし価格的に手が届くなら絶対にCX-5だ。

都会的で高級なイメージに変わったインパネ回り 都会的で高級なイメージに変わったインパネ回り

 特に2.2のディーゼルを選ぶとすれば、これは現在のベスト・ディーゼルエンジンの1つだ。力も十分ならマナーも良く、欧州製ディーゼルユニットのような極太トルクは望めない代わりに、ディーゼルの常識を打ち破る軽やかさを持っている。

 旧モデルで走り出してすぐ「これをモデルチェンジして良くしようと言うのか。そりゃ大変だろう」と思った。もっとはっきり言えば懐疑的だった。これを改良できるのかと。さすがはマツダのグローバル販売台数の4分の1以上を占めるCX-5だけのことはある。売れているには理由があるのだ。

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