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» 2017年04月22日 08時00分 UPDATE

繁盛店から読み解くマーケティングトレンド:ギンザ シックスが「規格外」である理由 (2/4)

[岩崎剛幸,ITmedia]

銀座との調和

 ギンザ シックスは松坂屋銀座店跡地と隣接する街区をつなぐ2つの街区を一体開発した市街地再開発事業です。商業施設とオフィス、観光拠点と文化・交流施設、そして屋上庭園という機能が一体となった建物です。

 商業ゾーンばかりが注目されがちですが、オフィスは1フロア面積が都内最大級の広さ(6100平方メートル)を持っていて、屋上庭園も4000平方メートルと銀座エリアで最大級です。

 また、銀座では初めて観光バスの乗降所を設置して、海外からの観光客を受け入れやすくしています。ほかにも災害時の帰宅困難者受け入れ環境を整備するなど、地域の中でどのような建物が必要なのかを考えて造られた施設なのです。

 当初は200メートルの高さの超高層ビルを作るという計画もあったようですが、銀座の地元商業者や来街者との調和を考えて、地上13階、56メートルの高さに抑えられたのです。このあたりからも地域との融合を何よりも大事にして開発されてきた経緯がうかがえます。

規格外な数

 同施設のメインの商業ゾーンは、過去にないスケールとクオリティを追求しようとしています。銀座エリア最大規模となる4万7000平方メートルの商業施設面積です。

 出店数は241店舗(ブランド)。出店数そのものは郊外の大型モールと同等クラスで、今の時代では取り立てて多い出店数ではありません。しかしその構成は規格外です。

 まず、241店舗のうち、半数以上の122店舗が、ここをフラッグシップ(旗艦店)と位置付けて出店しました。旗艦店ということは、ギンザ シックスの店舗にはどこよりも早く、どこよりも品ぞろえを厚くし、最高のスタッフを配備する店だというわけです。同施設を開発したGINZA SIXリテールマネジメント(大丸松坂屋、森ビル、L Real Estate、住友商事の共同出資会社)の掲げるコンセプトに共感した各社が、世界でもトップクラスの店にしようと考えているからこそのこだわりです。通常であれば旗艦店は全体の5%程度もあれば「多い」のですが、50%を超える店舗数という点で規格外であることがお分かりいただけるでしょう。

 日本初出店が11ブランド、世界最大級の売場面積が4ブランド、新業態が65ブランド、銀座初出店が81ブランド、日本最大級の店舗が34ブランド。「初」と「最大」と「最高」にこだわったブランド構成だということです。

 中でも、ディオール、フェンディ、セリーヌなどの6ブランドは2〜5層を持つ大型メゾネット型の店舗を作り、大型店の中にありながら、それぞれが単独の路面店舗のような空間を作り上げています。

「House of Dior」の1F店内 「House of Dior」の1F店内

 フロア構成は、基本的にはファッション中心にはなっていますが、テイストをそろえたブランド、日本の伝統を意識したゾーン構成、圧倒的な高級感を打ち出したコスメフロア、生鮮食品以外の食品に特化した新デパ地下ゾーンなど、MD(マーチャンダイジング)構成も新しさを感じます。

 商業施設の環境はとにかくゴージャス。空間にこだわり、施設のど真ん中に吹き抜けを造って、天井にはアートな空間を用意しています。「アートとサイエンスの融合がこれからの小売業には必要だ」とJ.フロント リテイリングの山本良一社長はよく言われていましたが、まさにそれを実現させています。

草間彌生さんのアート作品が吹き抜けに映える 草間彌生さんのアート作品が吹き抜けに映える

 各ブランドの内装レベルも高く、照明やファサードの作り、什器やレジ台など、細かいところまでレギュレーションを引いて店づくりに統一感を出していることが分かります。出店ブランドの内装も日本最高峰だと言えるでしょう。

 これらのこだわりは、いずれも同施設のコンセプトを起点に作られています。ギンザ シックスのコンセプトは「Life At Its Best 最高に満たされた暮らし」。最先端のスタイル、ラグジュアリー、サービス、環境のすべてを高いレベルで提供し、真に豊かな暮らしを感じることのできる施設を目指すとしています。世界でここにしかない特別な場と仕掛けにこだわり、ニューラグジュアリーを世界に発信したいといいます。ここまで徹底的にこだわらないと銀座ではやっていけないのです。

 同時に、今この時代に顧客に支持されるためには、他よりも圧倒的に優れたモノとコトの融合がなければいけないということです。

 山本社長は同施設開発時点から「ここでは百貨店はやらない」という“脱・百貨店”を掲げていました。今や百貨店に限らず、新店は3カ月もすれば陳腐化すると言われています。顧客がますます飽きやすくなっています。だから普通の力の入れ方では通用しません。年間売上高が6兆円を割り、閉店が続く百貨店にとって、従来の商売のスタイルだけではもうやっていけないことを痛感しての考えだと思います。結果的に明確なコンセプトを立てて、それを忠実に守った商業施設、空間を作ることしかなかったのです。

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