厚労省「ブラック企業リスト」に載った企業の傾向は?中小企業が7割、建設業が最多

» 2017年05月17日 16時33分 公開
[ITmedia]

 厚生労働省が、労働基準関係法に違反し、1年以内に書類送検された国内企業のリストをホームページ上で公開(関連記事)。電通、パナソニック、日本郵便など大手企業も含まれる「ブラック企業リスト」として関心が集まった。

 では、リストに掲載された332社には、どのような傾向があるのだろうか――東京商工リサーチが調査結果を発表した。

photo 厚労省が発表した「ブラック企業リスト」

中小企業が7割 既に倒産・解散した企業は18社

 掲載された企業のうち、売上高が判明したのは224社。売上高は「1〜5億円未満」が最も多く、31.5%(77社)。「1億円未満」は23.7%(58社)、「5〜10億円未満」は11.8%(29社)で、中小・中堅企業が全体の約7割を占めた。

 また、掲載企業のうち16社が倒産、2社が解散していた。東京商工リサーチは「業績悪化や資金力の乏しさが法令違反につながった可能性もある」と指摘している。

 一方、売上高100億円以上の大企業は21社。最も規模が大きな企業はパナソニックで、2017年3月期の売上高は約7兆3400億円だった。

photo 売上高別の分類。中小企業が7割を占める

建設、製造、サービス業が8割を占める

 掲載企業を産業別にみると、最多だったのは建設業で、34.6%(115社)。製造業が22.8%(76社)、サービス業などが20.48%(68社)と続き、上位3産業が全体の約8割を占めた。

 一方、金融・保険業は1社(0.30%)、不動産業は2社(0.60%)と少数だった。

photo 産業別の分類。建設・製造・サービスが大半を占めている

違反した法令は? レアケース「じん肺法」も

 違反した法令の内訳は、労働安全衛生法が211件(59.1%)でトップ。建設・製造事業者が、現場での安全管理義務を怠ったことで事故が発生したケースが多かった。

 2番目に多かったのは、違法な長時間労働など労働基準法で、63件(17.6%)。時間外労働が常態化していた電通も、この法令違反に該当する。

 違反例が少数だった法律は、「じん肺法」(1件)など。常に粉じん作業に従事していた労働者に、じん肺健康診断を受診させなかった土木系企業が、同法に違反していた。

 厚労省によるリストの公表に対し、東京商工リサーチは「企業名公表を受け、今後は多くの企業が従業員の『働き方改革』に着手するだろう。ただ、改革に着手できるのは業績が安定している大企業に限られるとの指摘もあり、国内の企業全体への浸透はまだ入口に立ったにすぎない」とみている。

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