復活を遂げた新日本プロレス 今後の成長戦略は?V字回復から5年(1/3 ページ)

» 2017年06月14日 06時00分 公開
[常見陽平ITmedia]

 国内のプロレス市場をけん引してきたプロレス団体、新日本プロレスリング(以下、新日本プロレス)。1997年をピークにその後業績が低迷し、年間40億円近くあった売り上げは11年には11億円にまで減少した。しかし、カードゲーム会社ブシロードが親会社となった12年から業績はV字回復。今期は37億円を見込んでおり、来期は過去最高の50億円を目指すとしている。

 米国への進出も表明し、挑戦の場を世界にも広げた新日本プロレス。今後、どのような成長戦略でプロレス界を盛り上げていくのか。大のプロレスファン、作家の常見陽平氏が新日本プロレスの原田克彦社長と対談した。

photo 原田克彦社長(右)と常見陽平氏(左)

投資に成功したブシロード

常見: 新日本プロレスにブシロードが資本参加し、5年が経ちました。この期間に業績はV字回復。主力レスラーの認知度も高まりました。そして、映像配信サービスの新日本プロレスワールドも始まりました。この5年間の手応えはいかがですか?

原田: V字回復は、2012年からブシロード社長の木谷高明オーナーのもと、選手、スタッフ全員が一丸となって取り組んできた成果であり、そのバトンを受け継いだような感じですね。私は金融機関から2年前にブシロードに転じて、1年前に新日本プロレスの社長に就任しましたので。

常見: 木谷オーナーも、もともとは金融機関ご出身ですよね。いま、ピンときたのですけど、金融機関出身者の“目利き”のようなものを感じました。新日本プロレスを買ったことは素晴らしい投資だな、と。投資の基本として、もともとの価値や実力以上に評価の下がっているものに注目し、その価値を上げていくというものがあります。

原田: そういう視点はあるかもしれません。

常見: 今振り返ると「低迷期」と言われた08年くらいに、大学のプロレス研究会の友人と一緒に、両国大会を見に行ったことがあります。その頃は僕らも会場に行かなくなっていて。「もうこれが最後かもしれないね」くらいの気持ちで行ったのですが、会場は片面をステージにしてつぶしていたものの熱気ムンムン。何より、試合が面白かったのです。

 それをブシロードの傘下になって広告宣伝費も投じ、大ブームになったなあ、と。これはナイスな目利きだなと。

原田: そのあたりの目利きはあったと思います。

常見: 団体内の新陳代謝も進んだというか、いや、正確には若手からベテランまで層が厚いというか。変化を感じます。選手のグッズを身に着けている人を街で見かける機会も増えました。決してスターとは言えなかった内藤哲也選手のファンも増え、盛り上がっているのを見ると、選手にも良い投資をしたなあと感じます。

 以前、インディーズと呼ばれていたような団体の規模が大きくなったり、老舗団体が分裂したりと、何かと変化の多い日本マット界ですが、今やメジャーと呼ばれる団体は新日本プロレスだけなのではないですか?

原田: 何をもってメジャーと呼ぶかは分かりませんが、業界トップであることは間違いありません。新日本プロレスが栄えると、プロレス業界全体が潤うという構造はあるかと思います。実際、他団体の動員も上向いているという話は聞きます。

 もっとも、それは国内の話です。グローバルで見ると、WWE(米国のプロレス団体)の売り上げは弊社の約25倍。WWEには、まだ対抗するどころか、学ばせていただくというステージかと思っています。エンターテインメントカンパニーとしては良いお手本といいますか。

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