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» 2017年06月19日 06時48分 UPDATE

池田直渡「週刊モータージャーナル」:「タカタ問題」の論点整理 (1/3)

エアバッグの巨大リコール問題で対応策を間違い、深刻な窮地にあるタカタは、会社更生ではなく民事再生という方法をとった。自動車業界を巻き込んだこの問題の論点を整理したい。

[池田直渡,ITmedia]

 経営に失敗したら退場するのは資本主義の大原則だ。淘汰こそが進歩のメカニズムだからだ。エアバッグの巨大リコール問題で対応策を間違い、深刻な窮地にあるタカタは、会社更生ではなく民事再生という方法をとった。要するに倒産の一形態である。ただし、倒産イコール廃業ではない。廃業するケースもあれば、事業を継続することもあるのだ。

 負債が資産を上回ることを債務超過と言うが、企業が倒産するのは債務超過が起きるからだ。実は世間一般に債務超過はこっそりと起きているケースがままある。資産の価値評価などによってバランスシートに細工を行ってごまかすケースが多いが、それでも現実のキャッシュフローが支払いの引き延ばしや隠ぺいではどうにもならなくなり、お金が返せなくなったことが外部に明らかになるわけだ。

大規模なエアバッグのリコール問題で経営難に陥ったタカタ(出典:同社Webサイト) 大規模なエアバッグのリコール問題で経営難に陥ったタカタ(出典:同社Webサイト)

 債務超過が金融機関などの外部にバレると、「期限の利益」を失う。それは借金や取引先への支払いなど、事前の約束通りの返済期限の利益を失うという意味で、即時全額の支払いを求められる。ただでさえ資金繰りがひっ迫している最中に即刻一括支払いを求められれば、万事休すとなる。よほどの内部留保がない限りこれを切り抜けるのは難しい。それが債務超過だ。経営者が震え上がる恐ろしい言葉である。

 タカタの場合、エアバッグ関連の改修費用は全世界で1兆円という説もある上、この品質問題で以後タカタ製品の採用打ち切りを決めたメーカーも出てきていることから、債務超過の瀬戸際にある。1兆円の負債は、金額的には戦後製造業で最大とも言われており、営業利益400億円のタカタに負えるレベルでは無いが、その行く末は自動車メーカとの費用負担交渉の成り行きによって大きく左右される。要するに1兆円を誰がどれだけ負担するかという話だ。

 現時点では自動車メーカー各社が改修費用を暫定的に全額立替えて、タカタには全く請求していないから債務超過に陥っていないだけのことだ。だからタカタを見捨てて、採用打ち切りとするメーカーが増えれば、立替費用は容赦無く請求されることになり、廃業するしかなくなる。それがなぜ更正の可能性を残しているかについての詳細は後述する。

 さて、倒産についての一般論に戻ろう。債務超過をどうするかについて、いくつかの段階的分岐点がある。最初に事業継続の可否という分岐があり、廃業するのであれば処分可能な全資産の適正な分配という1点に論点が絞られる。しかし、事業を継続するならば、事業継続に必要な生産資源を精査して確実に確保しつつ、債務の返済金額と期間について債権者の合意を得なくてはならない。

 事業継続を前提とする債務整理には、会社更生法に基づくものと、民事再生法に基づく2つの方法がある。おおざっぱな言い方になるかもしれないが、会社更生法では裁判所に任命された管財人が再建業務を実施する。民事再生の場合は現経営者が継続してその任につき債権者との話し合いによって再建業務を行う形になる。一概にどちらが良いという話ではないが、会社更生法適用の場合は客観的な立場の管財人が法律に則って公平性と透明性を重視する進め方、民事再生は事業内容を把握している経営陣が法律上の縛りだけでなく、個別の案件の特殊性に応じて最適な独自の折り合い点を模索する方法だと言える。

 一般論として、会社更生法適用のメリットは、モラルハザードを原則完全に排除できることだが、同時に債権者の個別事情に配慮することが難しく、その結果、事業継続上欠かせない小規模取引先などへの優先支払いができず、連鎖倒産などによって事業継続が難しくなるリスクがある。

 逆に民事再生は当事者間でうまく折り合えれば債権側と負債側双方の事情にある程度配慮できる可能性があるが、同時にモラルハザードのリスクを含んでいる。経営が立ち行かなくなるということは当然経営に何らかの問題がある可能性が高く、当事者による調整が行われると、問題が解決しないまま経営上の問題点が温存されるリスクをはらむことになる。それでは企業は再生しない。

 今回の場合、経営失敗→即退場とはいかず、問題を難しくしているのはタカタの技術に大きな価値があることだ。世界的に見てエアバッグを大量供給できる会社は限られている。近年は技術のコモディティ化スピードが速く、その結果、参入者がどんどん増えてコストダウンが進み、部品単価が下がっていくというルーティンが多いが、エアバッグに関してはあまりコモディティ化が進んでいないためにこうした少数社の寡占状態が起きているわけだ。

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