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» 2017年06月23日 06時00分 UPDATE

常見陽平のサラリーマン研究所:やっぱり、生産性向上に必要なのは「投資」だ

生産性についてを論じるとき、よく「日本人はダラダラ仕事をしている」と労働者をせかす意味で使われるが、これはやや勘違いをしている。生産性を上げるために必要なのは、投資なのだ。

[常見陽平,ITmedia]

 「Appleドヤラー」と呼ばれる人がいる。スターバックスなどのおしゃれなカフェで、「MacBook Pro」などをドヤ顔で操作している奴だ。2016年以降のモデルを使っている奴のドヤ感は、半端ない。

 キーボードが新しくなり、たたく音が微妙に大きくなっていることも、そのドヤ感をブーストする。Bluetoothイヤホンの「AirPods」で音楽を聴いたり、電話をしていたら完璧だ。新幹線の普通車にいっぱいいる、社畜感プンプンのWindows使いとは違う空気を醸し出している。

 しかし、このAppleドヤラーの気持ちは分からなくもない。というのも、Apple製品をそろえるのは、楽しいからだ。それぞれ、操作性も良く気持ちいい。私もボーナスと印税が出たので、絶大なる経済力で、買いあさってしまった。さすがにカードの請求が怖い。ここまで爆買いしたのは、実に久々である。

photo カフェには「Appleドヤラー」と呼ばれる人がいる

生産性向上に必要なのは投資

 もっとも、この新しいIT機器を使うというのは、実は生産性を上げるためには極めて合理的な投資なのである。通信速度が速く、機能性が高いものを使うと、気持ちがいいし、仕事がはかどる。いや、Apple製品は持っているだけで、できる人、かっこいい風になるので、その点でも便利なのだが。

 真面目な話をしよう。時代は「働き方改革」の大合唱だ。「生産性を上げろ」という話になる。これは簡単かつ抽象的にいうならば、アウトプットとインプットの関係から成り立つ。要するにアウトプットの価値が高いものを、少人数かつ短時間でやった方が良いという話だ。

 生産性についてを論じるとき、よく「日本人はダラダラ仕事をしている」と労働者をせかす意味で使われるが、これはやや勘違いをしている。生産性を上げるために必要なのは、投資なのだ。ITなどへ投資をするのである。

 実際、働き方改革はIT業界にとっては特需なのだ。だから彼らは、自分たちの企業でも働き方改革を推進し、自社を事例化してアピールする。はっきり言って、いじらしい取り組みなのだが、とはいえ、やっていることは正しい。社員を叱りつけて、意識や行動の改革を促すよりも、投資を行った方が早いのだ。

photo 生産性向上に必要なのはIT投資

 しかしここでも、「働き方改革」なるものの根本的な問題が垣間見られる。身も蓋もない話なのだが、労働時間を短縮するためには、ITへの投資やオフィス改革など、結局、お金がかかるということである。お金のある企業が働き方改革に成功するが、ない企業はますます厳しい労働環境になる可能性がある。ここが大いなる矛盾である。

 もちろん、創意工夫や意識改革で変えられる部分はあるが、これはITやオフィスへの投資よりも命中率が低いのだ。こうした問題を企業に丸投げせず、政府はこの点をきちんと議論していく必要があるだろう。

 この辺りの話は各紙で絶賛されている拙著『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)でも論じているので読んでいたただきたい。

 というわけで、Appleドヤラーは生産性向上という意味では、なかなか合理的なのである。もっとも、こいつらがもうかる仕事をしているかどうかは別だが。スタバでできるような機密性の低い仕事ってどうなのか。仕事の単価を上げる工夫が必要なのは言うまでもない。

 そういえば、ノマドブームなるものもあったなあ。冒険に出ようなんて言っていた人たちは元気だろうか。

常見陽平のプロフィール:

 1974年生まれ。身長175センチ、体重85キロ。札幌市出身。一橋大学商学部卒。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。

リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。長時間の残業、休日出勤、接待、宴会芸、異動、出向、転勤、過労・メンヘルなど真性「社畜」経験の持ち主。「働き方」をテーマに執筆、研究に没頭中。著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』『エヴァンゲリオン化する社会』(ともに日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)『普通に働け』(イースト・プレス)など。


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