なぜマスゴミの「ブーメラン報道」が目立ってきているのかスピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2017年08月22日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

さまざまな国で「メディア不信」の動きが出てきている理由

 実はジャーナリストとは、「カンピューター」で批判や評論をしている、ととらえると、なぜさまざまな国で「メディア不信」の動きが出てきているのかという理由も見えてくる。

 これまでジャーナリストはテレビ、新聞、ラジオという情報のインフラを独占していたので、少しくらい乱暴な話を触れ回っても、一般人は「偉いジャーナリストが言っているんだから、そういうものか」となんとなく納得してきた。しかし、ネットやSNSがこれだけ普及してきたことで、それが通用しなくなってきたのだ。

 個人が情報を調べることも、情報を発信することもハードルがかなり下がってきたことで、ジャーナリストの勘に基づく強引な主張、主観に満ちた批評などを検証することができる。過去の言動やバックグラウンドまで調べ上げることができるので、「他人に厳しく自分に甘い」なんてのもすぐにバレる。

 つまり、読者や視聴者がネットで「裏取り」できるようになったことで、ジャーナリストたちの「カンピューター報道」の粗が「悪目立ち」するようになってしまったのだ。

 そんな話こそ、お前の勘に基づく妄想だという罵声がいたるところから飛んできそうだが、大手マスコミが自分たちの言説に対して、一般人になるべく「裏取り」をしてもらいたくないと考えているのは、テレビ業界が「放送アーカイブ施設」をつくることに強く反対をしていることからも明白である。

 放送アーカイブ施設とは、これまで放送されたテレビ・ラジオ番組を全て録画・録音して保存して視聴できるような施設で、一部の国会議員から国立国会図書館のなかに放送アーカイブをつくるべきだという、構想がもちあがっているが、テレビ業界が獣医学部新設に反対する日本獣医師会のように反対をしている。

 その理由としては著作権の問題で手続き面や費用面が大変だとか、過去のニュース映像に映っている人の人権やプライバシーなどが挙げられているが、なによりも「共謀罪」やら特定秘密保護法の際に耳にタコができるほど聞かされた例のアレが錦の御旗とされている。

 『放送局側がもっとも警戒しているのは、「番組の事後検閲につながるのではないか」ということだ。放送事業は総務省からの免許事業。民放連の青木隆典事務局長は「何人(なんぴと)からも干渉を受けないというところが守れないと、言論・表現の自由はあり得ない」と話す』(毎日新聞 2015年7月20日)

 「そうだ! そんな危険な施設をつくったらヒトラー安倍の思うように報道がコントロールされてしまう」とシュプレヒコールをする方も少なくないが、冷静に考えると、これもおかしな話だ。

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