日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」に迫っていきたい。
パワハラの証拠となる暴言やどう喝をボイスレコーダーでこっそり録音してつきつける「ボイレコ告発」がいよいよ政治の世界にも登場したきた。
「このハゲー!」「ち〜が〜う〜だ〜ろ〜」で一躍時の人となった「ピンクモンスター」こと豊田真由子衆議院議員を、河村建夫元官房長官や細田博之自民党総務会長が必死にかばっていることからも分かるように、永田町ほど一般社会の感覚とかけ離れている世界はない。
河村氏が口をすべらせたように、あの世界では秘書へのパワハラなど当たり前だ。それがここまで表沙汰にならなかったのは、ヤクザの世界と同じで、「親分」に弓を引くことが「死」を意味するので、どんなに非人道的な仕打ちを受けてもみな墓場までもっていったからだ。やってもいない罪をなすりつけられる、なんて究極のパワハラを受けて失意のまま自ら命を絶つなんて秘書も珍しくなかった。
そんな伝統的ブラック業界にまで、「ボイレコ告発」が炸裂したということは、いよいよ「我が身を守るためにはボイレコをそっと忍ばせる」ことが日本社会の「新常識」となってきているのではないかという気がしている。
そう聞くと、「相手にわざと暴言を吐かせてそれを録音するなんてやり方が汚い」と不愉快になる方もいらっしゃるかもしれないが、事実としてこの近年さまざまな業界で「ボイレコ告発」が広まってきている。
例えば2016年末、大手飲食チェーン「しゃぶしゃぶ温野菜」の元従業員(千葉県のフランチャイズ)が、アルバイトの大学生を暴行したとして逮捕されたことがニュースになったが、この逮捕にいたるまで、大学生側はいわゆる「ブラックバイト」をさせられたと訴えていて、録音した元従業員の「どう喝」を公開していた。
「今、向かってっからよ。殺すよ、ほんとに。殺してやる」
2015年1月に自殺をしたヤマト運輸のドライバーも、亡くなる前に家族の勧めで上司からの叱責を録音している。そこには2時間にわたって嵐のような罵詈雑言がおさめられている。
「俺、マジいらねぇコイツ、殺してぇなホントに」
「本当に役に立たねぇ」
「バカなんだよコイツ!それがむかつく」
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