次に、炎上するブラック企業は「マスコミ」だスピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2017年07月04日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

「ボイレコ告発」が企業の中に浸透

 外食や宅配業界だけではない。2010年には医薬品製造会社の工場で、「殺すぞ」と怒鳴り続けられた派遣社員の男性が「ボイレコ告発」で賠償命令を勝ち取っているし、2014年には「たかの友梨ビューティクリニック」でおなじみの高野友梨社長が、従業員や店長に対して「労働基準法にぴったりそろったら、(会社は)絶対に成り立たない」などと組合活動に圧力をかけたかのように聞こえる音声を、「ボイレコ告発」された。

 録音された側の方たちからすれば、「問題」のある従業員を厳しく注意しただけで晒(さら)し者にされるのは納得いかないだろうが、子どものいじめ問題と同様で、いじめている側は「軽い悪ふざけ」のつもりでも、いじめられている側は「生きることに絶望するような嫌がらせ」のように感じる。「被害者」の立場からすれば「録音」は「正当防衛」以外の何物でもないのだ。

 実際、ネットを見渡せば「相手の暴言などの証拠を残しましょう」とボイレコ告発のアドバイスをしている弁護士が山ほどいるし、「パワハラ証拠録音は“弱いものいじめ” がよく分るようにつくりましょう」なんてアドバイスをしているかつての被害者もいらっしゃる。

 「ボイレコ告発」は静かに、そして確実に日本企業の中へと浸透しているのだ。

 そうなると、やはり気になるのは次に「ボイレコ告発」によって炎上をするブラック業界だが、個人的に危ないのは「マスコミ」だと思っている。

 政治という日本で最も旧態依然とした「ムラ社会」が陥落すれば、そのムラとベッタリとくっついて、トムとジェリーのように仲良くケンカをしてきたこの業界も同じ問題に見舞われるのは容易に想像できるだろうが、なによりもそう感じるのは、すでに「ブラック」というイメージが定着しつつある宅配業界の姿と妙にカブってきているからだ。

 スーツ姿で取材に奔走する新聞記者や、楽しそうにロケをしているテレビマンたちと、台車を押して常に忙しそうに荷物を搬送している宅配ドライバーたちの姿はなかなか重ならないだろうが、同じような「3つの問題」に苦しめられている点ではよく似ている。

マスコミも「ボイレコ告発」される日がやってくるのか

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