生鮮も売る「フード&ドラッグ」に地方の可能性を感じた小売・流通アナリストの視点(1/4 ページ)

» 2017年08月23日 06時30分 公開
[中井彰人ITmedia]

 8月7日、ドラッグストア大手のツルハホールディングスが、静岡県浜松市を中心とした地場有力ドラッグストア、杏林堂薬局の株式の過半数を取得する資本提携を発表した。これにより、ツルハはウエルシアホールディングスを抜いて、ドラッグストア業界トップの座につくこととなった。

 業界では昨年、売り上げランキング首位の交代があり、22年間業界トップに君臨していたマツモトキヨシホールディングスに代わって、イオングループのウエルシアが首位になったばかり。なお、マツモトキヨシはツルハにも抜かれ3位に転落した。業界上位企業の合従連衡が続いたドラッグストア業界では、売り上げランキングの変動は珍しいことではなく、こうした順位変動も直接的にはウエルシア、ツルハのM&A(合併・買収)効果の反映が要因だ。とは言え、長らくドラッグストア首位を維持してきたマツモトキヨシの首位陥落、そしてすぐさまツルハの首位奪取という変動は、かつて群雄割拠だったドラッグストア業界のシェア競争が終盤戦に入ったことを感じる出来事である。

業界の常識を大きく変えたマツモトキヨシだが…… 業界の常識を大きく変えたマツモトキヨシだが……

 かつて千葉県松戸市から興り、ヘルス&ビューティーという新業態で躍進したマツモトキヨシは、首都圏マーケットという巨大市場でトップシェアを獲得したことによって、業界のトップの地位を維持してきた。その後、遅れて地方にもドラッグストア企業が雨後の竹の子のように発生し、淘汰を経て地域有力ドラッグストアが成立するようになる。

 地方にも浸透したドラッグストアは、主力商品である薬粧(薬と化粧品)のマーケットシェアの大半を占めるようになり、薬粧における成長余地は乏しくなっていく。フロンティアが失われたドラッグストアは合従連衡によるシェア競争に移行し、地域をまたいだ大手企業が地方から現れるようになり、長年のトップ企業、マツモトキヨシと肩を並べる規模となった、というのが大まかな業界の現況と言える。

 こうした話を書くと、「ドラッグストアの市場規模は今までずっと成長しているではないか」というご指摘を受けるのだが、実際その通りである。ただ、その成長は薬粧以外の商品、特に食品の売り上げの伸びによるところが大きい。本来、ドラッグストアの収益源は薬粧であるが、ここでの伸びが昔ほど期待できないため、調剤の取り込みを図りつつ、食品や雑貨類を異業態から奪って、成長してきたということなのだ。

 例えば、こんなデータがある。図は主な上場ドラッグストアの食品売り上げ比率の高さと増収率の関係を示したものである。M&Aの効果が大きい企業を除けば、食品売り上げ比率の高い企業ほど増収となっていることが分かるはずだ。

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