大企業や自治体のPR動画がたて続けに「女性蔑視」で炎上している。
直近でいえば、息子の誕生日だというのにまっすぐ帰宅せず、ミスをした後輩と一杯飲むという父親が、「ただただ不快でしかない」という怒りの声がわきあがった「牛乳石鹸」のWebムービーや、お色気満点の壇蜜さんが亀の頭をなでて大きくなるなどの描写が「卑猥すぎる」と批判された宮城県のPR動画「涼・宮城の夏」などが思い当たるだろうが、この1年を振り返っても、以下のようなものがある。
ここまで連発すると、「わざと炎上を狙っているのでは」とうがった見方をする方もいるかもしれないが、壇蜜さんの動画のように確信犯的に狙って仕掛けているものもある一方、つくった当事者が戸惑って、すぐに公開中止をしているケースも少なくない。「仕掛け」にしてはあまりにお粗末と言わざるを得ない。
「いやいや、そうではなく、昔と比べて社会全体が不寛容になってきているのだ」と「時代のせいだ」と考える方もいらっしゃるかもしれないが、それは気のせいだ。
「昔はもっとおおらかだった」というのはノスタルジックな幻想に過ぎず、実はこの手の「女性蔑視CM」は昔も当たり前のようにあって、当たり前のように批判を受けてきた。例えば、有名なのは、いまから42年前、「ハウスシャンメン」というラーメンのCMである。
年配の方はうっすら記憶にあるかもしれないが、お母さんらしき女性と小さな娘が踊りながら「私、つくる人」と自分たちを指差す。すると、画面が切り替わって、息子らしい男の子が、「僕、食べる人」と自らを指差すCMだ。
「牛乳石鹸」に不快さを感じる方ならばすぐに分かるだろうが、「メシをつくるのは女の仕事、それをドカッと座って食べるのが男の仕事」という旧態依然とした男女の役割を固定化させる、として女性団体が抗議をしてテレビや新聞でも取り上げられるほどの大きな議論を呼ぶ。その結果、2カ月後に放映中止に追い込まれたのだ。
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