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» 2017年09月29日 07時00分 公開

杉山淳一の「週刊鉄道経済」:インバウンドを盛り上げる「日本海縦断観光ルート」胎動 (1/5)

京都丹後鉄道を擁するWILLERと日本海沿岸の新潟市、敦賀市、舞鶴市、豊岡市は「日本海縦断観光ルート・プロジェクト」を発表した。豊かな観光資産を持つ地域が連携し、従来の拠点往復ではない「回遊の旅」を提案する。成功の条件は「移動手段の楽しさ」だ。交通事業者にとって大きなチャンスである。

[杉山淳一,ITmedia]

 9月25日、日本海沿岸の観光需要を盛り上げるために、新潟市、福井県敦賀市、京都府舞鶴市、兵庫県豊岡市と、高速バス事業のWILLERが幹事会社として協議会を設立すると発表した。観光事業の広域連携は、都市相互間の観光交通がカギとなる。一旅行者としても、そして観光業、交通事業を研さんする者としても注目したい。この仕組みは日本海沿岸だけではなく、多くの自治体、交通事業者の参考になるはずだ。

photo 4自治体1社による共同会見が行われた

 日本海沿岸の旅行者のパターンは、首都圏、近畿圏から来訪し帰って行く「往復型」だ。日本海沿岸の横の移動は少ない。これまで日本海沿岸都市はそれぞれ観光事業に力を入れてきた。例えば豊岡市は、2020年までに訪日外国人旅行者10万人を目標としている。16年は前年比30%増の4万4000人となっている。順調に見えているけれども、目標には遠い。

 そもそも日本海沿岸と太平洋沿岸を比較すると、日本海側は国内外ともに観光客が少ない。太平洋側は東京、名古屋、京都、大阪など大都市圏があり、東海道新幹線、山陽新幹線、高速道路など交通も発達している。ただし、太平洋側のゴールデンルートは盛り上がっているけれども、たびたびホテル不足が話題になるように、飽和状態に近づいている。

 日本全体のインバウンド獲得として考えると、日本海沿岸の観光が盛り上がれば大きな増進につながる。日本海側も太平洋側のように横方向のつながりを強化し、ゴールデンルートを形成すれば、日本海沿岸各都市の観光客増進につながるではないか。それが上記4市と1社が発起人となった「日本海縦断観光ルート・プロジェクト」だ。

photo 外国人旅行者数の達成目標は高い。日本海沿岸の県は統計で「その他」にまとめられているけれど、これを黄色の都府県並みに増やせば達成に近づける

 日本海沿岸といっても、新潟市、敦賀市、舞鶴市、豊岡市という組み合わせが興味深い。新潟市と敦賀市は離れており、間にある金沢市、富山市という大御所が抜けている。日本海沿岸とうたうからには、石川、富山の都市とも連携が必要だし、北は山形、秋田、青森、西は鳥取、島根、山口にも広げていきたい。どの県も有力な観光地がすぐに思い浮かぶ。もちろんそれは発起人の4市1社とも心得ており、自治体や交通事業者などに呼び掛けているとのことだ。

photo 日本海沿岸も多数の旅行者を獲得している。ただし、ピンポイントの旅行者が多く、回遊型の旅行はあまり開発されていない
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