インバウンドを盛り上げる「日本海縦断観光ルート」胎動杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)

» 2017年09月29日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

きっかけは北前船

 4市1社がまとまったきっかけは、4月に日本遺産に認定された北前船だ。「荒波を超えた男たちの夢が紡いだ異空間〜北前船寄港地・船主集落〜」というストーリーで、北海道函館市と松前町、青森県鰺ヶ沢町と深浦町、秋田県秋田市、山形県酒田市、新潟県新潟市と長岡市、石川県加賀市、福井県敦賀市と南越前町が取り組んだ。北前船は江戸時代に成立した海運交易の主要ルート。近畿地方で昆布だしの料理が発達した背景には北前船があった。北前船の日本遺産プロジェクトは酒田市が代表となった。

 「日本海縦断観光ルート・プロジェクト」では、新潟市が連携の要になったようだ。新潟市と敦賀市は新日本海フェリーでつながり、北前船を連想させる。新潟市と豊岡市のつながりは鳥。新潟ではトキ、豊岡はコウノトリ。どちらも絶滅危惧種で、保護と繁殖に力を入れている。その豊岡は日本版DMO(観光地経営組織)の取り組みでWILLERと連携している。

 WILLERは高速路線バスを全国展開するほか、グループ内に京都丹後鉄道(WILLER TRAINS)がある。京都丹後鉄道は豊岡と舞鶴を結ぶ。また、WILLERはレストランバス事業を展開しており、その最初のツアー開催地が新潟市だった。この縁が「日本海縦断観光ルート・プロジェクト」につながる。

 交通に興味を待つ立場からすると「きっとこれもWILLERが旗振り役だったに違いない」と思ってしまうけれど、発表会の様子から察すると違うようだ。発端は新潟市と3市の間の「現在は北前船のような強いつながりがない。日本遺産をきっかけに、海路陸路を交えた回遊ルートを作ろう」という思いだった。WILLERの村瀬茂高社長も「一交通事業者として参加し、他の地域の交通事業者へ連携を呼び掛けていく」と語っていた。

photo 北前船の衰退で、日本海沿岸のつながりは薄くなってしまった?

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.