事実、衆院選の投票率が59.65%と始めて5割台になったのは平成8年(1996年)、参院選の投票率がガンガン落ち始めて44.52%となったのは平成7年(1995年)なのだが、この時代というのは、政党を立ち上げただけで、金集めもせずに税金がガッポガッポもらえるという「職業政治家」にとって夢のような身分保障制度である「政党助成金」が導入され、ポコポコと新党が立ち上がった時代でもある。
もちろん、これは卵が先か鶏が先かみたいな話でもある。
よく投票率が落ちたのは、昔と比べて政治の質が落ちたからだと言う人がいるが、テレビによく出る人気党首や人気政治家が応援にかけつけた時だけ、ワーワーキャーキャーと街頭演説に黒山の人だかりができることからも分かるように、有権者の質もしっかりと落ちている。
政治の質が落ちたから有権者の関心が薄れたのか、有権者の関心が薄れたから、政治の質も落ちたのかは正直よく分からない。
ただ、ひとつ言えるのは、投票率が落ち込む流れをみていると、「マドンナ旋風」「新党ブーム」「小泉旋風」といった「ブーム」が微妙にリンクしているということだ。
当たり前だが、「ブーム」はいつか終わる。その熱狂がクールダウンしていく際に放つ冷却効果が、「なんかもう○○ブームにも飽きたな」という感じで、有権者の政治に対する期待や関心のようなものまで冷ましてしまっているようにも見えるのだ。
安倍は独裁者だ、小池は中身がない、前原はもう終わりだ――。政治に対して、いろいろ「けしからん」という文句ばかりが聞こえてくるが、もしかしたら一番けしからんのは、お祭り騒ぎが好きなわりに飽きっぽくて、政策よりも「党首」の好き嫌いだけで投票をしてしまっている我々有権者なのかもしれない。
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」に迫っていきたい。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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