日本は大丈夫なのか 米大使館を苦しめている「音響兵器」世界を読み解くニュース・サロン(1/4 ページ)

» 2017年10月05日 07時34分 公開
[山田敏弘ITmedia]

 今、キューバで起きた奇怪なニュースが話題になっている。

 2017年9月29日、米国務省はキューバから米大使館員の半数以上を帰国させると発表した。その理由は、「これまで数カ月以上にわたり、多数の在キューバ米大使館の職員が、攻撃の標的になってきた。職員たちはその攻撃によって苦痛に苛まれてきた。彼らは、耳の病気や聴覚消失、めまいや頭痛、倦怠感や内臓機能障害、認識能力障害、睡眠障害など幅広い身体的な症状を訴えている」からだという。

 被害者の数は21人にも上り、すでに述べた症状以外にも、嘔吐、鼻血、平衡感覚障害、脳震盪(のうしんとう)や脳腫脹(のうしゅちょう)などの脳損傷、記憶障害、会話障害などが起きていると報じられている。

 恐ろしいことに、国務省はその攻撃がどんな種類のもので、誰が実行したのかは現時点で分からないとしている。しかも被害はカナダ大使館員にも広がっているという。

 当のキューバ政府は、一切の関与を否定。だが、2016年の米大統領選の候補でもあったキューバ系共和党員のマルコ・ルビオ上院議員は、「キューバ政府が知らないなんてことはふざけた話である」と、キューバ政府の主張を一蹴している。

 ではいったい何が起きたのか。被害者たちの中には、ベッドで横になった時にのみ振動と耳をつんざくようなノイズを感じていたと報告し、一方で何も感じていないまま被害を受けた者もいた。

 欧米では、この攻撃が実は「音波」を使ったものであるとの指摘が出ている。

 ちまたでは今、北朝鮮が上空で核爆発を起こして敵国のインフラなどを電磁波で破壊するという「電磁パルス攻撃」を行うのではないか、というSF小説のような話が出ている。筆者はそのシナリオに否定的な欧米専門家らと同じく電磁パルス攻撃が実際に行われることはないと見ているが、一方で音波の攻撃はすでに実用化されており、キューバで同種の攻撃が現実的に行われたとしても不思議ではないと感じている。

「音波兵器」が米大使館を襲ったのか
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