藤田氏は新規事業を立ち上げるとき、まず「何となくやる分野を決める」と言う。「755」の例で言えば「コミュニケーションサービスをつくる」とは決めていた。
ではなぜ、この分野だったのか?
「より多くのユーザーがターゲットになるからです。インターネットビジネスは生活のさまざま場面に結び付くから幅広い分野で勝負できますが、成長性やビジネスが広げられない分野だと、そのうち必ず『行き止まり』にぶつかります」
例えば婚礼サービス。結婚する人口は減少傾向にあって、結婚も、せいぜい1人が1〜2回程度。そこから広げるのは難しい。一方、コミュニティーサービスなら、誰もが参加でき、長く、そして何度でも使える。
もちろんこの分野にはLINE、Facebook、Twitterなど巨大な先行者がいる。だが筆者は「755」も十分に戦っていけると考えている。
筆者はお茶の「伊右衛門」、コーヒーの「BOSS」などのブランドをつくってきたサントリー食品インターナショナルの社長を取材したことがある。その多くは後発だが、現在はメジャーブランドと化している。成功要因について、社長は「消費者は現在の市場を席巻している商品に決して満足しているわけではない」と言った。同様にSNSもいまだ「完成品」ではなく、使い勝手の悪さなど不満を感じているユーザーも少なからずいるはずだ。すなわち、新たなサービスが食い込む余地は十分に存在するのだ。
そして、ここからが本題だった。
「コミュニティサービスは、つくっておくと何かをきっかけにブレイクすることがあるんです。例えばFacebookやTwitterも、日本にきて2年ぐらいは全く浸透していませんでしたよね。でも、ちょっとしたきっかけでブレイクすると、みんながどんどん使い始めてくれます。そのタイミングがくる確率は低いんですが、くれば大きな成功を得られます」
要するに、リスクは小さく、リターンが莫大なのだ。アプリの立ち上げや運営にかかる費用は人件費とサーバ代がほとんどで、サイバーエージェントにとっては大きな金額ではない。一方Facebookの価値は数十兆円とも言われている。
「僕は、こういったビジネスをいろいろ展開して、トータルでプラスになれば良いという感覚なんです。最初の計画通りに進む会社はなかなかありません。もともと僕はリアリストで、何をやるにしても期待値を考えるんです」
1回100円のギャンブルがあり、当たると200円返ってきて、外れると没収されるとしよう。当たる確率が50%なら、期待値は1.00。何回続けても増えも減りもしない。当たる確率が45%なら、期待値は0.9だからやるべきでなく、当たる確率が51%以上ならやる価値がある。藤田氏はこれと同様の考えで新規ビジネスに向き合う。
「期待値がリスクに対して大きく上回る事業は、やる価値があるわけです。そういった意味で、僕は常にリスクとリターンの割合がいいものを探しているんだと思います」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング